E-CUBE 2005年09月

VOL.44 9月号


NZで活躍する日本人

時代を飾るキウィ




自由時間 : ワーキングホリデーやスチューデントで活躍中

<オペア:比嘉 新子 さん | メイン | ラグビーレフリー:谷 欣也 さん>

合気道:後藤 麻衣 さん

後藤 麻衣 さん合気道を通して、日本の伝統文化の奥深さを再認識しました。

幼い頃は日本舞踊をたしなんでいたという後藤麻衣さん。もともと日本の伝統文化には興味を持っていたが、武道的なマナーは日本よりも良いといわれるここNZで始めた合気道の稽古を通して、日本において忘れられつつある「和の心」を学んだ。

Mai Goto
後藤 麻衣(ごとう まい)

1984年生まれ。静岡県浜松市出身。短大卒業後、2004年6月にワーキングホリデー制度を利用してNZへ。フラットメイトの影響で合気道を始める。日本へ帰国後は、最近興味を持ち始めたカイロプラクティックの学校へ通う予定。

神流館では参加者を募集中につき、興味のある方は
09-379-3777高瀬師範まで。

 

 私の実家では、ホストファミリーとして海外留学生を受け入れていて、彼らから外国の様々な話を聞いて育ちました。シンガポールやスウェーデン、ペルー、台湾など、様々な国籍の学生たちが話す、彼らの祖国の風景や習慣、価値観、暮らしぶりなどは大変興味深く、私に海外生活への強い憧れを抱かせました。そのうちの何人かとは、彼らが祖国に戻ったあとも文通をしたり遊びに行ったりして交流を続けていました。
 海外への憧れは年々増していき、短大卒業後はワーキングホリデー制度を利用して、1年間NZへ渡航することを決めました。そのまま就職することはとても考えられず、もっと他の、大切な何かを見つけないといけないような衝動に駆られたのです。そして、日本で知り合ったNZ人の友人から聞いた、自然が多くのんびりしたNZの雰囲気は、せかせかすることの嫌いな私にぴったりだと思ったのです。

異文化の中でも広く受け入れられている合気道に惹かれた

 英語でのコミュニケーションにはある程度慣れてはいましたが、この機会にヒアリングとスピーキング力をもっと伸ばしたかったので、NZでの最初の3ヶ月は語学学校に通うことにしました。そのあとは、料理教室に通って様々な国の料理をマスターしたり、以前から興味のあったヨガを習ったりしようと思っていたのですが、たまたまフラットメイトが合気道をしていることを知り、もともと日本の伝統文化には興味があったので、合気道の稽古場である神流館NZ本部道場に見学に行きました。道場では大学生から83歳の老人まで、様々な年齢層の人が大勢稽古に参加していて、活気に満ちていました。
 神流館は、合気道の創始者植芝盛平翁の流れを受け継ぐ財団法人合気会のNZ支部として1969年にNZ支社が設立され、現在世界85ヶ国にある合気会支部で、150万人の会員が合気道を習っているそうです。日本の文化が他国でもこうして受け入れられていることが、日本人として誇りに思えると同時に、性別や身長、体重は関係なく力も使わないので、練習を重ねることで、一般的な日本人と比較しても小柄な私でも、自分より一回りも二回りも大きな男性とでも対等に張り合えるようになるということがとても魅力的に聞こえ、その日のうちに合気道を始めることを決めました。

合気道は「己に勝つ」ことを目的とした武道

 合気道は「和」の武道とも呼ばれ、相手の攻撃を制するためのもので、相手を傷つけることを目的とはしていません。柔道や剣道など武道が「他者に勝つ」ことを目的としているのに対して、合気道では「己に勝つ」ための心身の錬成を目的としています。「己に勝つ」とは、すなわち「絶対的勝ち」で、人と争うことによって生じてくるこだわりから解放されることを目指す、とは師範の教えです。
 合気道の技法に関しては様々な流派が存在し、同じ流派でも指導者が違えば少しずつ技法も違ってきます。そしてそれらの技法が混じり合いながら進化していっているのですが、進化のスピードが早い日本に比べて、指導者の絶対数が圧倒的に少ないNZでは、進化のスピードはそれほど急速ではありません。しかし、それゆえにNZで合気道をたしなむ人は奥深く追求する傾向があり、武道的なマナーは、むしろ日本よりもこちらの方が良いのだそうです。4年に1度東京で開催される合気道世界大会では、例年海外からの参加者は1ヶ国平均20人前後なのに対し、昨年の大会では、NZから43人が出席するなど、参加率が他の国に比べて高いことからも向上心の高い人の多いことが窺えます。
 合気道は争わないことを基本としているので試合は一切行わず、ペアを組んで、技を行う側と受け身を取る側に分かれて反復練習をします。合気道を始めてまず最初に習うのが受け身です。受け身は投げられたり、倒されたりしたときの衝撃から身を守るための技法で、すべての技を行ううえでの基本となります。その中でも基本となるのが、相手から受けた力の方向性を利用しながら、後ろ側にある相手に近い方の足を折り体を後方へ倒し込む後方受け身ですが、最初は恐怖心もあり、衝撃を上手く吸収できずに背中を打ったりと、散々でした。
 受け身がある程度できるようになると、今度は技の稽古に入ります。投げ技や固め技など様々な技がありますが、基本的な練習法としての技はすべて相手の攻撃を起点として行います。そして、技を行ううえで最も重要な動きが入身(いりみ)と転換です。入身とは相手の攻撃を交わすと同時に相手の死角に入ることで、相手から自由な動きを奪うための動きで、転換は自分の体を相手と同方向に回転させることで、相手の姿勢を崩れやすい方向へと導くための動きです。
 合気道での動きはすべて、力を入れず円を描くような動きが特徴です。体験すればすぐわかりますが、体に力をいれて踏ん張り、力を振り絞って相手の手を握っていると簡単に崩されてしまうのです。
 合気道で大切とされる呼吸や、体の重心、視線に注意を払うことなどは、4~11歳までの7年間習っていた日本舞踊とも共通する点があり、すぐに親しみを感じられました。特に一つ一つの動きに意味があることなどは、師範の説明を聞いてなるほどと思うと同時に、日本舞踊を習っていた当時はまだ幼かったため、動きに込められた意味などよく理解していなかったことを残念に思いました。今度、再び日本舞踊を始めたときには、その意味を理解したうえで日本の伝統芸能を表現したいです。
 高瀬師範以外に6人ほどいる先生のほどんどはNZ人で、外国人から日本の伝統文化や日本的な考え方を習うのは不思議な感じもしましたが、己に厳しく和を重んじる日本伝統文化の奥深さを、合気道を通して再認識したような気がします。

合気道を通して学んだことを、日常生活でも役立てていきたい

 金曜日以外の毎日、1時間行われる稽古には、時間が許す限り休まず参加するようにしています。稽古では、師範が毎回お手本を見せてくれるので、それを真似て同じようにしようとするのですが、最初は一向に上達しない自分にイライラして、めげそうになったこともありましたが、その都度道場の仲間達に励まされてきました。道場の仲間は、半分以上は地元のNZ人ですが、みんなとてもフレンドリーで、稽古後に一緒に外食したり、ホームパーティーに呼んでもらったりと、道場以外でもよく行動を共にします。彼らとの交流が楽しいことも、合気道を続けている大きな理由の一つです。
 私はまだまだ経験が足りないため、頭で次の動作を考えながらしか技を行うことができませんし、実感として体の小さいことが不利にならないとはまだ思えないのですが、もっと稽古を積んで体が反射的に動くようになり、体の大きな人とでも互角に張り合えるようになりたいと思います。
 そして、合気道の技自体は普段の生活で使うことはないかもしれませんが、合気道の技に必要な、相手の意識や次の動作を察知することなどは日常生活にも役立てていきたいと思います。
 嬉しいことに、合気道を始めて4~5ヶ月ほど経った頃から、体質も改善されてきました。疲れにくくなった以外に、市販の薬では効かず、病院通いを強いられていた便秘も治り、今では薬いらずの健康体になりました。もうすぐワーキングホリデー期間も終わりますが、帰国後も合気道はぜひ続けていきたいです。また、日本舞踊ももう一度始めたいと思います。

合気道:後藤 麻衣 さんと連絡を取りたい、勉強したい、体験したい、資格を取りたい、この分野で仕事をしたいと言う方はイーキューブ留学セクションまで、お問い合わせ下さい。

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