関西出身の読者の方々の中にはジーン長尾さんの名前を聞くとピンと来る人が多いに違いない。99年の10月まで大阪のラジオ局FM802の朝の情報番組「AMUSIC MORNING」(アミュージック・モーニング)の顔としてあまりにも有名だったジーンさんが現在はオークランドに在住だ。「おはようございます。ジーン長尾です」の名せりふであわただしい朝を癒されたリスナーは数知れない。仕事で会った映画俳優、ミュージシャンなど世界中の有名人とのインタビューで使いこなす英語は好奇心をベースに磨き上げて来たものだと語る。
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大阪府大阪市生まれ。関西外国語短期大学英米語科在学中より、KBS京都で番組アシスタントを始める。その後同局でラジオ番組を担当して以来、関西の各ラジオ局で音楽番組、情報番組等のDJを歴任。大阪のFM802では朝の顔として知名度は抜群。
柔道で3度のオリンピック代表経験を持つニュージーランド人のご主人ビルさんと1999年にオークランドに移住し、現在はマウント・イーデンでVillage Wineryを経営。現在の趣味はお菓子作り。
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ニュージーランドとの関わり
正直言ってニュージーランドの事はほとんど知りませんでした。知っていたのはオーストラリアの隣にあるという事くらいでした。そんな私がニュージーランドを意識しはじめたのは1986年にニュージーランド人のビル(ご主人)と日本で出会ってからです。その後、二人で88年12月から89年1月にかけて約1ヶ月間ニュージーランド中を旅行しました。これが初めてのニュージーランド訪問でした。
ビルは柔道で日本に来ており、同志社大学でよく練習をしていました。また、立命館大学などで英会話の講師などもやりながら、ニュージーランドグッズを日本に紹介する仕事を行っていました。
私はビルと一緒にいる事でニュージーランドと関わるようになり、それ以来、二人で毎年一回はニュージーランドに来るようになりました。そんな事を毎年しているうちに、若い頃から20年近くも日本に住んでいたビルは青春時代を生まれ故郷のニュージーランドで過ごしていない事に気づき、いつかはニュージーランドに戻って来て、自分の国をもっと知りたい、素晴らしい自然を体験したいと思うようになりました。また、私は私で、ずっとやって来たDJをピークの時に辞めたいと思っていました。そのいいタイミングが2000年のミレニアムだったのです。
ビザに関して
ミレニアムに間に合うように1999年11月にニュージーランドに引っ越しして来ました。
私のビザは、ニュージーランド人を配偶者に持つ人に与えられる永住ビザです。結婚証明など必要な書類にビルが書いた手紙を添えて香港のニュージーランド大使館に送ったら、一週間足らずでおりました。当初一ヶ月から6週間かかると言われ間に合わないのではと心配していたのですが、直接大使館に電話をかけたり、手紙で状況を説明したのがきいたのかもしれません。
当初の英語のレベル&英語を使っての初めての仕事
私は大学在学中からKBS京都(テレビ・ラジオ局)でKBSガールとしてアシスタントのアルバイトをしていました。ところが、74年にラジオの担当となり、洋楽のカウントダウン番組「FUZZ BOX」(ファズ・ボックス)という番組のDJをやる事になりました。私はそこで二つの難題に直面しました。今まで経験もなかったのにプロとして喋らなければならなかった事。さらに喋るのは英語オンリーだったのです。高校時代に2年間アメリカ留学をしていたとはいえ、ラジオで喋る英語は勝手が違いました。
とは言うものの、アメリカでの2年間は帰宅のスクールバスの中で流れるカウントダウン番組をいつも楽しみにしていましたので、洋楽番組とはどんなものなのかが、ほぼわかっていました。また、番組の中で喋る英語も「先週10位から今週は3位に」など、比較的使い回しができるフレーズが多かったのでそれらをフル活用しました。
「FUZZ BOX」を担当した直後は、実家の近くに住む外国人に番組内で使う英語を見てもらった事もありました。しかし、慣れてくるうちにそれも回数が少なくなり、次第に自分で準備できるようになりました。というのは、ラジオは書いたものと違って、流れてしまえば後に残りません。文法的な正誤に気を使うよりも、サウンドやリズムといった、英語のノリに重点をおいていました。結局「FUZZ BOX」を4年担当しました。
勉強の方法
ラジオを通しての英語だったため、発音はちゃんとしようと心掛けました。これはよく聞いて、声に出す事で練習できます。そして、何度もくり返して声に出す事で覚える事ができるのです。アメリカ留学の時には、ヒットチャートの曲などで気に入ったフレーズがあれば家に帰って何度もくり返し、声に出して覚えました。覚えなければいけない事があったら、くり返し声に出して、それをまたくり返し聞くと自然と覚えていくものです。
また、言葉は生き物です。いつ新しい言葉に直面してもいいように専門用語をチェックしていました。私は仕事がら音楽専門用語が必要でした。音楽専門誌の「ビルボード」や「キャッシュボックス」を取り寄せて読んだり、「USA TODAY」は新聞の中でもエンターテインメント系の記事が多いのでよく目を通していました。
英語を使った仕事上でのテクニック
FM802 の「AMUSIC MORNING」を担当するようになってからは、私が必要としていた英語は「コミュニケーションの英語」でした。英語を使ってのインタビューでも結局、聞く内容は日本語で会話する時と何も変わらないのです。つまり、ちゃんとした英語をしゃべるというテクニカルなことも大切だけど、ハートを持って接することを忘れてはいけないと言う事です。
これは私がDJをやって初めて英語を使ったインタビューでの失敗の経験から実感した事なのです。事前にたくさんの質問項目を英語で書いて、聞きたい順番に並べて準備しておいたのですが、相手の方の答えの内容やその場の雰囲気などで、こちらの思っているようにインタビューが進まなかったのです。英語でのインタビューでしたので、緊張してしまい、挨拶もない、聞きたい事もあまり聞けず、限られた短い時間の中でのぎこちないインタビューとなってしまいました。その後、何度も英語でインタビューを経験しているうちにわかった事は、インタビューするアーティストのプロフィールのチェックや、これまでの作品を観たり、聴き直したりといった下調べさえ充分であれば、お互いにわかってもらいたい、わかりたいと思っているので、必ず通じるはずです。
私は今まで自分の番組やイベントなどでセリーヌ・ディオン、カイリー・ミノーグ、スティービー・ワンダー、ホイットニー・ヒューストン、マライア・キャリー、ビリー・ジョエル、ハリソン・フォードなどに英語でインタビューをしました。ハリソン・フォードに会った時に、ニュージーランドワインをプレゼントしようと思って持参したのですが、事前にスタッフの一人から花束以外はプレゼントできないと言われたので、インタビューの最中に「せっかく持って来たのに渡せないのが残念」と言ったら、ハリソンが「そんな事を言った奴は誰だ!」とスタッフに向かって怒って、結局ワインを受け取ってくれたんです。ワインという言葉でそれまでの硬い表情が和らぎ、そんな軽いワインの話題で盛り上がったので、後はインタビューが非常にやりやすくなりました。ニュージーランドワインはビリー・ジョエルの時も功を奏しました。有名人にはワイン好きが多いんです。
事前に調べた情報でワイン好きということがわかったからです。ですから下調べは大切ですよ。
英語上達への信念
留学時代は完璧に英語を喋らなければいけないと思い込んでおり、ちゃんと喋れないと恥ずかしいという思いがありました。そこから緊張のあまり「Hello!」を「Herro!」と言ってしまった事もありました。ある時に先生から「Nobody is perfect」(誰もパーフェクトではない)と教えられ、ほっとしてその後から積極的に喋るようになりました。
また、もともと人とコミュニケーションを取るのが好きだったんです。英語の持つ響きや言葉の流れ方が好きで、アメリカという国にとても興味がありました。アメリカを見てみたい、知りたいという気持ちから、私の英語とのつきあいは始まりました。
今興味があるのはワインと料理、日本ではあまりお目にかかれない西洋野菜を使ったメニューやお菓子作りが楽しいです。お料理の本に出てくる専門用語もだいぶ覚えました。興味のある事、つまり自分の軸となるものと英語をセットにして勉強すれば効果が上がるはずです。
あれがしたい、これがしたいという好奇心は英語の上達の起爆剤となるはずです。
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