Vol.20 Career up in NZ ニュージーランドで美容室経営 |
ほんの数年前までは、ニュージーランドで生活しているのだから少しくらいボサボサの髪でもいいや、という意見が正論のように言われていた。しかし今、同じようなことを言う人は確実に少なくなってきている。急速に都市化が進み、カレン・ウォーカーのような世界的ファッションデザイナーが輩出される中で、身なりは少々悪くてもという言い訳はもはや通用しなくなってきている。このことはヨーロピアンに比べて髪質が硬いといわれる我々日本人にとって、日本人ヘアスタイリストはニュージーランドで生活する中で欠かせない存在になっているということを意味している。
小学生の頃から美容室の空気というか雰囲気そのものが好きで、美容師という職業になりたいと思っていました。それで、高校を卒業してすぐに2年制の専門学校に通ったのです。この2年制というのは学校の中で勉強とインターンを行うもので、その頃ではめずらしいシステムの学校でした。 卒業後、美容師として、そして講師として学校に残った。
卒業後の進路を決めるときに副校長からそのまま学校に残らないかと勧められました。私が通っていた学校では、美容室を4店舗持っており、その美容室の勤務と学校の講師をすることが仕事の内容でした。こういった二つの環境で働く機会はめったに持てるものではないため、私はその勧めを受けることにしました。500人の生徒のうち私を含めた10人が学校に残りました。 講師としての経験は美容師としての成長に役に立ったという。 こうした授業は、私にとってもまた授業のようなもので、多くのことを学びました。生徒は私の一挙手一投足を見ています。それは生徒の実習の時にできあがる髪の毛の形に表れるだけではありません。生徒は実際にカットやパーマの練習をするときには私と同じ位置に立って行います。そういった生徒の姿で自分が実際にお店に出ているときの姿を客観的に捉えることができました。また、講師として生徒から受ける質問には正確に答えなければならないため、理論もしっかり頭の中に入れておくことが必要でした。毛髪の伸縮のことでもそうですが、生えている方向や、パーマをかけるときに起きる化学反応など、自分が行うことや教えることすべてについて、理由が必要です。学校を卒業して、実際の業務に携われば覚えた理論はやがて経験的にも体得します。私の場合は講師をする事によって、その体得したものを経験だけでなく、常に理論として客観的に捉えることができました。 もう一つ、美容師に必要な感性の部分では、多くの生徒達とのコミニケーションが貴重な情報源でした。私が担当した8クラス、美容師を目指す約500人の感性はそれぞれです。実習でカットやパーマを練習するときに、生徒たちは同じウィッグという練習用の人形を使って、同じ型に仕上げても、500通りの型が出てきます。それは自分が、気がつかなかったことを発見する糸口になりました。 美容師としての勉強はもちろん講師の部分だけではありませんでした。こうした経験のほかに、私の学校では美容師の海外研修もあり、そこで、感銘を受けました。働き始めて最初の年にパリのロレアル本社で3回研修して、私は、フランスでの美容師の地位の高さに驚きました。自分自身はまだ美容師になりたてでしたし、期間が短かったために、どういった技術がどのようにすばらしいかということは、あまりはっきり覚えていませんが、私が会ったパリの美容師全員に、自分がファッション業界をリードしているのだという意識が感じられたことを覚えています。 97年にニュージーランドにワーキングホリデーとして入国する。
ヘアスタイリストと講師という生活を続けていることには何も不満はありませんでした。むしろ楽しい毎日でした。ただ、それは大きな組織の中での一人であり、これでは自分は井の中の蛙になってしまうのではないだろうか、そんなことを考えているうちに、自分のことを誰も知らない所に行って、どれだけできるのかを試してみたくなってきたのです。それでニュージーランドに来たのです。この国を選んだ理由は単純でした。山岳ガイドをしている親戚がいて、その人にニュージーランドはいい国だよと言われたからです。 02年9月に自らの店「BLUE BLUE」をオープンさせた。 この国では日本よりも、プロとして仕事をしている緊張感があります。理由の一つには言葉での影響ということもあります。日本人以外のお客様とは当然、英語での会話になります。そのときによく、「あなたはプロなんだから、私に似合う髪型をさがして」とか「プロなんだからこの髪型にして」というように、話の中にプロという言葉が出てきます。もちろん日本でも同じ内容の会話が交わされていましたが、プロという言葉が出てくることは、まずありませんでした。日本で生まれ育った私にとってこのプロという言葉は自分の意識を高めるのに非常に役に立ちました。これを聞く度に、そうだ私はこれが好きでこの道に入ったのだと常に初心に戻ることができます。また、中国の人が日本人のヘアスタイリストにカットしてもらうことが一つのステイタスだということもこの国へ来て知ったことの一つでした。 日本人が求める美容室
日本人のお客様が、日本人のヘアスタイリストに求めるものの一つは言葉、そしてそれに伴う微妙なニュアンスだと思います。つまり日本で受けていた美容室と同じサービスを、日本語で求めているのだと思います。日本でスタイリストを経験している人であれば技術があるのは当たり前の話です。それは一度来てもらったお客様が再び自分のところに来てくれるかどうかですぐにわかることです。ただ、日本のお客様は技術だけでは十分に納得できないのではないかと思います。そこで私は日本と同じように個人のカルテを作成して、個々のお客様を店全体でサポートできるようにしています。これには髪の特徴や、そのときに使用したパーマのロッドの番号や本数をはじめ、様々なことが細かく記入してあります。これは、例えば、お客様が仕事の都合でどうしても今日の予約を入れたいという場合で、運悪く担当のヘアスタイリストがカゼで休んでいるといったときでも、そのカルテがあれば前回と同じ施術ができるのです。 美容師になるための留学をしたい、体験したい、資格を取りたい、この分野で仕事をしたいと言う方はイーキューブ留学セクション「イースクエア」まで、お問い合わせ下さい。 お問い合わせはこちら |