ニュージーランド国内に28、シドニーに1軒のホテルを有するホテルチェーン「Millennium Copthorne Quality Hotels and Resorts (MCQ)」。それら29ホテルの予約を受けている部門のセントラル・リザベーション・オフィスに勤務している大内恵子さん。予約や問い合わせの件数は電話だけで一日に500件前後になる。
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岐阜県高山市出身。専門学校卒業後、旅行会社に勤務。その後ニュージーランドのウェリントンへ。3ヶ月間、語学学校へ通い、Central Institute of Technologyの旅行観光学科へ。在学中にワーク・エクスペリエンスで訪れた旅行会社に就職、7年間ツアーオペレーター、スーパーバイザーとして勤務。2001年より現在のMillennium Copthorne Quality Hotels and Resortsの集中予約センターで働き始める。
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日本で勤めていた会社を辞め、ニュージーランドに来たのは92年のことです。最初はウィリントンの語学学校に通いました。そこで「英語を学ぶだけでなく、英語で何か学んだ方が楽しいだろうな」と思うようになりました。そこで専門的な知識を学ぶことができる学校を探しました。
日本では旅行会社でカウンターセールスをしていたので、同じ業界のことであれば英語でもついていけるだろうと思い、ツーリズムの学校へ1年間通うことにしました。そのコースの一部で、実際の企業に入り体験学習をするワーク・エクスペリエンスをオークランドの旅行会社で行いました。
このワーク・エクスペリエンスが機会で卒業後はオークランドの旅行会社に就職することになった。そこで約7年間、旅行の手配を行い、00年に退社。01年よりMCQのセントラル・リザベーションで勤務を始めた。
ここの業務はホテルの予約受付です。電話での対応、ファックス、電子メールへの回答。28ある各ホテルのパンフレットに載っている予約電話番号やフリーダイヤルはすべてここにつながるようになっています。ですから、ここでオークランドでもベイオブアイランズでもタウポでもダニーデンでも、MCQグループの予約を一手に引き受けているのです。このオフィスはオークランドのビジネス街の一角にあるビルの中です。ただ、多くのお客様はここを自分が宿泊しようと思っているホテルだと思って電話をかけてきますので、いきなり何月何日から何泊大丈夫?と言われてしまうことも多々あります。
電話とファックスは1日の平均が各500本前後です。これを約10人のスタッフで処理します。つまり、1つ1つの予約を素早く処理することが求められます。ファックスや電子メールは直に相手につながっているわけではないので、急かされること無く確認を入れながら処理していきます。基本的には1時間以内に回答を出すことが原則ですが、自分のペースで処理できます。しかし相手のペースになる電話の場合は少し違ってきます。
電話の件数は多いときでは700件を越します。そういうときは1人のお客様の予約が終わってスイッチを切ると同時に次のお客様の声が入ってきますし、電話の呼び出し音は常に部屋に鳴り響いています。
オフィスにいるスタッフ全員の受話器がオンラインになっている場合、お客様にはホテル案内のテープが流れ、待ってもらうことになります。私達はそれを、現在の待ち人数が表示される電光掲示板で把握します。そこに一人でも表示されている場合は必ず手の空いている、この場合は受話器の空いているスタッフは誰であろうと、電話を取らなければなりません。
だからと言って、私達は安心して一人のお客様の対応だけに時間をかけるわけにはいきません。ゆっくり進めていては相手のストレスにもなりかねませんし、何よりテープを聞いて待っているお客様に迷惑がかかります。電光掲示板は待っているお客様の数をカウントすると同時に、各お客様の待ち時間もカウントします。そして待ち時間が1分を超えた場合は警告音がなります。その場合はすぐにそのお客様の電話に出なければなりません。それはスーパーバイザーであれ、他のセクションの人間であれ、今の自分の仕事の手を止めて電話にでるようにしています。
電話がつながった途端、「一体どうなっているんだ」と怒鳴られたということもありました。丁寧にそしてテキパキと対応することがここでは重要になるのです。しかし、こういったトイレに立つこともできない日が年中続くというわけではありません。今更ながらに思い出すことは、この募集広告に条件としてプレッシャーに強いこととありましたし、面接時にもプレッシャーのことについては言及されたことです。その意味はこのことにあったのです。
前職では7年間、旅行関連の仕事をしていた恵子さん。当然、その業務でも電話は使っていた。しかしこの予約センターでの仕事を始めた当初は緊張の連続だった。
この仕事を始めて、最初の頃は電話のベルが鳴るたびに緊張していました。前職で、電話の相手はある程度、取引のある人達がほとんどでしたし、相手によって話す内容は決まっていました。ですから、お互いのことを知っている場合が多いですし、気心が知れた人もいました。もちろんここでも話す内容はホテルの予約と決まっています。ところが、相手は見知らぬ人です。そのために最初はドキドキしながら受話器を握っていました。
各お客様によって異なる予約の条件をコンピューターの画面で探したり、確認したりすることに手惑っていたことも、緊張の原因の一つでした。特にこのホテルグループではFLY BUYSカード(カード提携店で買物をするとポイントが加算され、そのポイントに応じて各種のサービスを受けられる)のポイントで宿泊することができるため、特にその説明はノート見ながら話をしていました。予約受付は通常のお客様とまったく同じなのですが、予約をキャンセルした場合でもカードポイントの返還はない、それもいろいろなキャンセルのパターンがあるのですが、そういった事細かなコンディション説明があったからです。
ただ、電話なのでファックスや電子メールと違って後に残るものが何もないため、ホテルの名前と日程と料金は最後に再確認することを心がけていました。また、相手の名前のスペルも必ず確認しています。これは今でも変わりありません。
仕事に慣れていく中で恵子さんは失敗も何度か経験したという。
受話器を取った後、思わず前の会社の名前をフルネームで言い切ってしまったことがありました。その時は、言っている途中で気がつくこともなく、はっきりと言ってしまったため、かけてきたお客様が間違い電話をしたと思ったのでしょうか、言葉を詰まらせたまま、電話を切られてしまいました。予約の日にちでの失敗もあります。 何月何日ということを電話でもコンピューターへの入力の時も、しっかりと確認したのですが、コンピューター入力で年度を間違えてしまったことがあります。幸いお客様が宿泊する日が次の年だったため、直接迷惑をかけずには済みました。
去年から開催されているルイ・ヴィトンカップ、そしてアメリカズ・カップ。これらのイベントでオークランドのホテルの予約は一杯になり、また宿泊レートも上がっていった。アメリカズ・カップ開催時期には通常の3~4倍の宿泊レートを提示していたホテルもあった。
もちろん、アメリカズ・カップ時期はオークランドのホテルは予約で一杯でした。MCQの場合ですと、ウォーターフロントのコプソーン・ハーバーシティはもちろん、コプソーン・アンザック、クオリティホテル・ローズパーク、郊外のローガンパークまで一杯になりました。アメリカズ・カップということで言えば、前大会でチームニュージーランドの優勝が決まった直後に予約が入ってきました。そうかと思えば、この1月の終わり頃に問い合わせが来たりもしました。
アメリカズ・カップの場合は時期や人数の規模も大きくなりますが、こういったことは年間を通して起こっています。例えばラグビーの試合が開催される時のオークランドやクライストチャーチなど都市部のホテルや、夏の時期のベイオブアイランズやタウポなどの観光地のホテルなど、スキー場の近くであればそれは冬になりますが、季節や場所によって予約の入り具合は変わってきます。季節や日にちによる宿泊人数の増減は各ホテルのマーケティングが大体予想を立てています。それにより、その期間の宿泊料のレートが設定されます。しかし、期日が迫るにつれて、レートも変わってきます。需要と供給の関係で、部屋数が少なくなれば、レートは上がりますし、そうでなければ下がります。こうして各ホテルから毎日出されるレートはコンピューターの画面を通して私達にも伝えられますので、私達はその値段を見てお客様に回答します。間違った情報を伝えないためにも、その確認も怠れません。
部屋の確保や値段は、いずれにしても、早めに予約を入れていただくのが一番だと思います。
電話での対応に余裕が出てきてからは、相手により気遣う点を変えているという。
例えば、ファミリーの予約の場合は、ベッドの大きさなど部屋の説明を細かくする必要があります。ダブルベッドがいいのか、シングルベッド2つがいいのかなどと聞いて、お客様を家族構成に合う部屋に誘導します。
一方、旅行代理店やインフォメーションセンターなどの窓口から問い合わせがある場合は、そういった説明よりもスピードが重視されます。電話をかけてくる方の目の前にはほとんどの場合、その窓口に来たお客様が座っていますので、イエス
かノーかという回答を早く聞きたいと思っています。ですから、素早い対応をすることが一番望まれるのです。
また、去年の11月からは日本マーケットの担当になり、日本の旅行エージェントからの予約も行っています。団体のツアーで大きな数の予約はなるべく早くいただくようにして、部屋を確保するようにしています。
私の仕事は多くの人と接します。とはいってもお客様の顔を見ることはありません。それだけに普通の接客係りよりも受け答えには慎重になります。電話を通してなので、顔を見ることは無くても、お客様が最初に話をするのは私達です。ですから私達がホテルの顔になると言う気持で受話器を取っています。旅行というのは準備をしているときでも、楽しいものです。ホテルを予約するということは、準備の中の一つです。その予約の電話で、お客様が「このホテルに泊まってみたい」という気分になる応対をこれからも続けていきたいと思います。
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