Vol.57 Career up in NZ ニュージーランドの日本人コメディアン 中辻拓志さん |
2005年のコメディ・フェスティバルで最優秀新人賞に輝いたHiroshiさん。「落語界で言うと、今の自分は、見習い、前座、2ツ目、真打(しんうち)の中の2ツ目に当たると思います。」と語る彼は、舞台でトリを務めることができる真打クラスへの昇進を目指し、芸を極めることに励む。常に面白いことを探しながら、人生を楽しむのが彼のライフだそうだ。小学生でショービジネスに目覚めて、中学・高校で寡黙な男になり、大学で落研に入部、アメリカへ演劇留学。そして、2003年にニュージーランドへ。「アメリカの舞台で、宗教をからかったり、ドラッグ、下ネタにいっちゃっていたので、現在、少し軌道修正しているところです。」 と自らの芸について語るニュージーランド・コメディ界の新人の頂点に立ったHiroshiさんの素顔をご紹介しよう。
小学生の時にショービジネスに目覚めました
「有名な合唱団で、小学4年から6年までボーイソプラノを担当してたんです。」写真撮影の間も、太くて低い声でひたすら喋って、コメディアンぽく体を動かし続けるひろしさんにはその面影は全くない。「NHKコンクールで全国2位になったり、日本武道館で有名アイドルのクリスマスコンサートでも歌って、その時にショービジネスに目覚めたんです。テレビに映ったりして、ナルシストの自分に目覚めて。当時はおちゃらけるのが好きでしたね。でも、中学と高校は静かになったんです。自分的に、『おれって寡黙でかっこいい。喋りすぎてたらもてないぜ。』って感じで。ラグビー部に入って、プレイしながら自分はかっこいいって思ってましたね。テレビドラマの『スクールウォーズ』に感化されて、試合に負けると、みんな抱きしめあって泣くっていう感じで。その寡黙だった頃に、自分を見つめ直したんです。その時、寡黙な自分を演じていて、これは本当の自分じゃないと思って。大学に入学したら、落研に入ろうと決めました。」そこでなぜ落研なのか?その質問にかなり長い時間をかけて、回答をしぼり出したひろしさん。「言葉のパワーに興味があって。一言で人生を変えることってあるじゃないですか。それで言葉を使って何かやりたいと思ったんです。お笑いの舞台で、お客さんが笑っている時は、ぼくの言葉がお客さんをコントロールできている時。逆にお客さんに呑まれちゃうと、ぼくの言葉が上手く作用していないからで。お笑いの中でも、落語がやりたかったんです。落語家さんの非常に腰が低 くて、感じのよい人たちというイメージが好きだったので。」 いつもぼくの興味はコメディでした
「大学では落研の部室に朝からいましたね。落語のストーリーをまず覚えて、自分なりの演出をして、上下(かみしも)の切り方(2人役の方法)、扇子や手ぬぐいといった小道具の使い方を練習してました。でもたいていは、部室で仲間と面白いことを言い合ったり、朝からお酒を飲んだり、特に落語とは関係なかったですね。大学2年の時に休学してアメリカに1年間、英語と演劇で留学しました。その時は、授業に毎日出席していましたね。日本に戻ってきて、また落研に通っていたんですけど、授業料を払い忘れて大学を除籍になりました。それでまたアメリカに戻って、演劇を勉強しました。いいコメディアンは必ずいい演技ができるし、いい役者はコメディができるということで、演劇を勉強していましたが、いつもぼくの興味はコメディでしたね。はじめはやはり外国人なので、英語で苦労しました。それでパントマイムもしてましたね。アメリカ演劇はそんなに深くないんですよ。だから何も教えてくれないんです。声の出し方とか舞台での動き方、セットの作り方、脚本書きなど、技術的なことは教えてくれるのですけど。発音は訛っているのはいいのですけど、観客が理解できる英語じゃないと意味がないんで、訛りの矯正はしましたね。」演劇の成績がよかったことから奨学金を貰い、全部で5年間アメリカで過ごしたひろしさん。 アメリカは紙一重までOK、でもニュージーではひかれます
学校で演劇を勉強しながら、地元の学生のアマチュア劇団でも活動。「アメリカ人は何でもありで、結構なんでも笑ってくれますね。日本でもよく台詞を噛んで、噛み芸で笑わせていたのですが、アメリカでもそうでしたね。ブーイングも勿論ありましたよ。『アメリカ万歳!』って舞台に上がっていって盛り上げた後 に、『I am just kissing your arse.(おべっか使っているだけだよ)』って落としたら、ブーイングで。そして観客の1人が舞台に上がってきて、お尻出して、『Kiss my arse.』って言ってきたハプニングがあって。とっさに、ぼくがお尻にインタビューしたら、観客はうけてはいましたけど。アメリカは、紙一重まで行かないと笑ってくれないのだけど、やり過ぎるとダメですね。でもニュージーランドだと、紙一重まで行くとしらけますね。『はい、はい、がんばってるねぇ』って感じになっちゃいます。最初、ニュージーランドでは何が受けるか分らなかったので、アメリカと同じようにしたら、客が引いたので、『ぼく、頑張りすぎちゃったよね』とフォローしたところで、受けていましたね。アメリカでは、宗教をからかったり、ドラッグ、下ネタにいっちゃっていたので、今は少し軌道修正しています。アメリカでそのネタ以外で客を笑わせるにはですか?そうですねぇ。深めることなく、どうするのかを理解する前にアメリカから撤退してしまいましたね。」 ショートランド・ストリートでも噛んでます
今年8月に、ひろしさんはニュージーランドの人気ドラマ『ショートランド・ストリート』に出演。「ぼくの役どころは、金髪好きのストーカーみたいなもてない30歳の医者。でもいい人で。普段は仕事ばっかりで、映画『ピアノレッスン』を観て、ニュージーランドに憧れて来たという設定。たまたまぼくが本当の日本人だということで、台詞に日本語も入れようということになって。『きれいだな』っていう台詞は、アドリブなんです。撮影はロトルアであって、朝の6時半からメイクが始まって、衣装に着替えて、朝の7時ごろから夜の11時ごろまで撮影でした。ぼくの関わった撮影は2日間で、全部の撮影は3日間かかりました。出演した感想ですか?ぼくの演技は、まずいですね。パーティーのシーンで噛んでましたしね。5回くらい撮り直しをして、それでも噛んでいたので、『もういいよ、頑張ったから』と言われ、撮影を終了。夜の11時ごろまで噛みまくって頑張ったので、最後の場面は、パーティーで金髪の女の子1人と話をしている設定だったのを、女の子2人に増やしてくれました。」 コメディ・フェスティバル優勝は皆様のお陰です
「2003年にニュージーランドに来てから、コメディアンの登竜門でかつニュージーランドの唯一の寄席『ザ・クラッシック』の前を通るたびに、いつかここでやるんだと思っていました。それから1年くらいして、やっと舞台に立てて、10回くらいライブをした頃にコメディ・フェスティバルに出場しました。」
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