E-CUBE 2005年10月

VOL.45 10月号


NZで活躍する日本人

時代を飾るキウィ




自由時間 : ワーキングホリデーやスチューデントで活躍中

<合気道:後藤 麻衣 さん | メイン | カフェのシェフ:森田 良子 さん>

ラグビーレフリー:谷 欣也 さん

谷 欣也 さんラグビー大国NZで通じるレフリーになれば、世界でも通用します。

先月にはNPCが開幕し、早くも盛り上がりを見せ始めているNZ。そのラグビー大国でレフリーになるためにNZに来た谷欣也さんの夢は、2011年に日本で開催されるかもしれないワールドカップでレフリーを努めること。

Kinya Tani
谷 欣也(たに きんや)
1970年生まれ。愛知県岡崎市出身。石川県高等専門学校の環境都市工学科で7年間教職に従事、ラグビー部顧問を務める。本職の合間には社会人ラグビーのレフリーとしても活動する。世界的レベルのレフリーになるため2003年8月にNZへ。オークランドの留学エージェントで勤務し、留学生らの相談にのっている。また、ラグビールール勉強会に参加する傍ら、タッチラグビーチームを結成し、中心となって練習を進めている。

 

 子供の頃から体を動かすことが大好きで、小学生から始めた剣道は、中学では市の大会で度々優勝するほどになりました。しかし、高校に入ってからはたくさんの強豪に出会い、頭打ちにあいました。そこで大学では他のスポーツを始めたいと思っていたところ、ラグビー部に勧誘されたのです。今までは個人競技ばかりで団体種目をしたことがなかったので興味を持ち、入部することになりました。
 個人種目と異なり団体種目では、個人の能力ではどうにもならないような場面でも、チームの中で自分の役割を見つけられ、チーム全員が一致団結することで試合を有利に展開できることが、とても新鮮に感じました。そして、生涯を通してラグビーを続けたいと思うようになり、大学卒業後は、ラグビー部顧問としてラグビーに関われる教員の道を選び、石川県高等専門学校の環境都市工学科で教職に就き、希望でもあったラグビー部顧問を務めることになりました。同時に本職の合間には社会人ラグビーのレフリーとしての活動も始め、国体や、高校ラグビーの全国大会である花園、県の招待試合でもレフリーを努めました。
 もともと、いったん何かを始めたらとことんまで突き詰めていかなければ気が済まない性格で、県のレベルだけで満足するのではなく、レフリーとしてもっと上のレベルを目指したいという思いが年々強まってきました。レフリーをして評価を得てレベルを上げるためには、スタミナがあり、ルールを正確に把握し、なおかつ試合の流れを読める能力が求められますが、日本でトップレフリーになったとしても、世界的なレベルとはかなりの格差があります。そこで、どうせなら一気に世界のレベルを目指そうと思い立ち、ラグビー先進国NZへ行くことを決めました。
 
ワールドカップ2011年に向けて、ラグビーのルール勉強会に参加

 NZ到着後はクライストチャーチで日本語教師のアシスタントとして仕事をする予定でしたが、手違いからその話は流れ、しばらくは語学学校へ通ったりして過ごしました。2004年12月にオークランドの留学エージェントでカウンセラーとして働くことになりました。
 生活も少し落ち着いてきたので、毎週1回1時間半ほど行われる、NZでレフリーになるためのルール勉強会に参加し始めました。そこでは、実際にレフリーとして活動している人が集まって、試合の反省会のようなものが行われます。それぞれが自分のケースを題材として提供し、ディスカッションが繰り広げられます。
 ラグビーはまだ未完のスポーツで、ルールは毎年変わってきています。制限が少ない分ルールは極めて複雑で、レフリーに与えられている権限は他のスポーツに比べて大きいと言っても過言ではないでしょう。加算される得点が大きく、勝敗を分けることにもなるトライの時に限り、ビデオを用いた判定が行われますが、その他、ルールをどう適用するかはすべてレフリーの判断に任せられています。試合をしているチームのレベルに合わせてルールを適用しなかったり、ケンカになりそうな雰囲気の場合は厳しめに反則の笛を吹いたり、反則があっても、試合が順調に流れていて、それが反則を犯された側にとって不利にならないような場合は、試合の流れを中断しないことを優先します。
 判定にはあいまいな部分を多く含みますが、あいまいだからこそ、自分自身の基準をしっかりと持つ必要があり、選手を納得させるものでなければならないのです。そして、選手を納得させるためには英語でのコミュニケーションが取れることは必須になります。試合中に選手に出す指示などはだいたい決まっているし、シンプルなフレーズがほとんどですが、判定について選手からの質問には、正確な発音ではっきりと受け答えしなければなりません。試合中の選手は往々にして興奮していますので、日本なまりの発音を辛抱強く聞く余裕を持ち合わせていないのです。現在はまだ仕事が忙しくて時間的にも精神的にもそれほど余裕がないため、英語の勉強も思うようにできていないのが現状ですが、近々語学学校の夜間学校に通うつもりでいます。
 また、現在参加しているルール勉強会は初心者のためのものですが、将来はプロの試合でレフリーができるようになりたいです。これは少し先の話になりますが、しばらくレフリーの現場から離れているので、感覚を取り戻すためにもまずは高校生の試合など下のレベルからレフリーを始めて、実績を作っていきたいと思っています。
 目標は、日本で開催されるかもしれないワールドカップでレフリーを努めることです。今年11月に決定されるワールドカップ2011年の開催候補地に日本が上がっていますので、日本に決定すればあと6年しかありません。ここNZでレフリーになることにこだわるのはそのためです。ラグビー大国NZで通じるレフリーになれば、世界でも通じるからです。

初心者でも気軽にできるタッチラグビーを通して、ラグビーの魅力を伝えたい

 同時に、NZに来て以来運動らしい運動はしていなかったので、体を動かすために何かスポーツを始めようと思いました。レフリーには、一試合80分間ボールを追いかけてひたすら走り続けられるだけのスタミナが必要不可欠なのです。そして、どうせするならみんなで集まってワイワイできて、今まで慣れ親しんできたスポーツが良いと考えたのですが、ラグビーは選択肢には入れませんでした。ラグビーを日常的にプレーする結果、レフリーとしての反射的な動きを妨げる場合があるからです。レフリーは選手がボールを前方に投げたのかそれとも後方に投げたのかを判定するために、常に選手の先回りをしてボールと同じ位置にいる必要があるなど、レフリーに必要な動きとラグビーのプレーに必要な動きとは異なるのです。そこで選んだのがラグビーの練習法の一つとしてよく取り入れていたタッチラグビーでした。
 タッチラグビーは、ラグビー強国の集まるここオセアニア諸国で、簡単にできるラグビー練習法の一つとして生まれました。その安全性と簡単さから性別や年齢に関係無く誰でも出来るスポーツとして、現在では世界各地に広まり、人気が高まっています。特にNZでは小学校の体育の授業でも行われるほど盛んにプレーされています。
 タッチラグビーでは、ラグビーで見られるタックルやスクラムなどの激しい接触プレーを排除しています。相手にタッチすることがタックルの代わりになります。走る、パスするという簡単な技術だけでプレーできるため、男女混合や親子が一緒にチームを組むことが可能で、ラグビーと違って攻守がはっきりしているなど、ルールも比較的わかりやすいことが、世界中に広まった理由の一つといえるでしょう。
 より多くの人がこの初心者でも気軽に参加できるタッチラグビーを楽しむようになれば、ラグビーに興味を持つ人の数ももっと増えるのではないかという期待もあり、早速、語学学校の掲示板などで仲間を募ったところ、ラグビー経験者も含めた8人ほどのチームができました。日本人以外にも中国人、韓国人、NZ人のメンバーが毎週日曜日にオークランド・ドメインに集まり、2時間ほどタッチラグビーの練習をするようになりました。女性のメンバーも、多いときでは5人いました。
 最初は仲間同士でのパスの練習や、2つのチームに分かれて試合形式での練習をしていましたが、最近では、よく隣で同じようにタッチラグビーの練習していたマレーシア人チームと対抗試合もできるようになりました。やはり仲間内だけでの練習よりも気合いが入り、念入りに作戦を練ったりと、試合中はみんな真剣そのものです。こうした国籍を越えた交流が簡単に可能になることも、活動を続けるうえで大きな動力となっています。また、タッチラグビーを通して、危険なスポーツというイメージの強いラグビーをもっと身近に感じてもらい、ラグビー人口の底辺を広げることに少しでも貢献できれば、これほど嬉しいことはありません。
 現在は、NZで年に2回ほど開催されるタッチラグビー競技会への出場に向けて、核となるメンバーを結成し、練習に励んでいます。

ラグビーレフリー:谷 欣也 さんと連絡を取りたい、勉強したい、体験したい、資格を取りたい、この分野で仕事をしたいと言う方はイーキューブ留学セクションまで、お問い合わせ下さい。

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