ベビーシッター:木村 彩 さん

現在、幼児教育を学ぶためにAuckland University of Technologyに通っている彩さん。ニュージーランドに来た目的はベビーシッターの経験を積み、子供についての勉強をすることであった。高校3年の夏、現在までにいたる転機が彩さんに訪れる。
木村彩。
1979年生まれ。佐賀県出身。オーストラリアのワーキングホリデーや日本での現場体験をえて幼児教育を勉強するためニュージーランドに来る。もともと子供好きなことから幼い子の世話には大変熱心。そんなことから、日本人はもちろん、キウィもベビーシッターとして彼女を指名する人が多く、忙しい毎日を送っている。
「私の家は両親が大変、子供好きだったために近所の子供たちがよく家に出入りしていました。幼い頃から常に子供がいる環境でした。近所の子供で生まれてから兄弟のようにずっと成長を見てきた子がいます。ハイハイを始めたとき、言葉を発したとき、洗濯物でファッションショーをしてみせたり、会うたびにその成長には驚かされていました。いつしか子供っておもしろいなあと興味が湧いていました。高校卒業が来年に近づき、今後の進路を真剣に悩んでいました。姉がシドニーで学生をしていた影響もあり、海外で英語と幼児教育について勉強できないかと思ったのです。両親の協力もあり、高校卒業してまもなくオーストラリアにワーキングホリデーで行くことになりました。私はずっと、英語を避けて通ってきていたので中学程度の知識しかありませんでした。ホームステイをしながら語学学校に通ったのですが言いたい事が言えず大変悔しい思いをしたのを覚えています。結局、英語学校には半年通いました。そして、ウエイトレスをしながら英語を実践で勉強していきました。ワーホリ生活が終わる頃にはなんとか人が言っていることは自然とわかるようになっていました。」
オーストラリアでの1年間のワーキングホリデー生活を終え、日本に戻ってきた彩さんの成長は大きなものだった。
「両親に『あなたは変わったね』と言われました。行く前と比べて積極的に行動するようになったみたいです。1年間はあっという間で結局英語だけしか勉強できませんでした。幼児教育に関しては何一つ勉強できませんでした。ですから、日本に帰ってきても、もっと勉強したいという気持ちでいっぱいでした。」
帰国後、彩さんはニュージーランドのオークランドに旅立つため、バイトを始めた。
「ニュージーランドは私が住んでいる佐賀の環境に似ていて緑が多く住みやすいと聞きました。そんな理由から勉強するための目的地に決めました。運良く、2つのバイトがうまく見つかりました。託児所で子供の世話をするバイトとデパートの子供服売り場でのバイトです。朝8時30分に家を出て午前中は託児所で子供達に本を読んだり砂遊びをしたりしました。午後はお昼寝をさせたり部屋を片付けたり、次の準備をしたりして3時まで働きました。そのあとはデパートの売り場で10時くらいまでの仕事です。1日12時間労働で約2年間続けました。家族の協力もあり、スカイパーフェクトTVで英語の番組を見たり、英語の音楽を聞いたり、家では英語にふれる環境をなるべく多く作り、出発の準備をしました。」
01年3月彩さんはオークランドにワーキングホリデーでやってきた。
「日本では航空券を購入しただけでした。到着後すぐにバックパッカーに行きました。バックパッカーに滞在中の1週間で家を探しました。運良くシェアメイトの娘さんがべビーシッターを探していたので仕事につく事ができました。べビーシッターをするときに毎回簡単なインタビューがあるのですがそこでは『将来何をやりたいのか、子供のどんな事に対して興味があるのか、いままでのベビーシッターの経験など』を聞かれます。私の経験からこの国の人は日本人がベビーシッターをやる事に対してとても安心感があるようです。日本人に頼むと責任感が強いのでちゃんと仕事をしてくれると思われているようです。」
本格的に幼児教育について勉強して働いてみたいと思うようになった彩さんはAuckland University of TechnologyのEarly Child Hood(幼児教育)を学ぶ事を考える。
「ニュージーランドは家に幼い子だけをいさせてはいけないという法律があり、両親が外出するときはきまってベビーシッターのような人を頼みます。そんな環境からベビーシッターをする機会を多く持てました。Day Care Centreと呼ばれる施設(託児所)でボランティアとして働く機会にも恵まれ、いろいろ経験を積むこともできました。ある家にベビーシッターに行ったときです。ニュージーランドの子供は常に靴を履いて、日本と違って外と家の区別がつきにくい環境で遊んでいます。そんな環境で子供たちは落ちている食べ物も平気で口に運んだりします。私は日本のような感覚で気にしていたら、親の方はあまり気にしない様子で驚きました。Day Care Centreでは泣いている子を他の子供が母親のようにハグをして、なだめているのには驚きました。日本では見た事がない光景でした。そんな日本との違いを感じたことがもっと勉強したいと思い学校に通う事になったのです。」
シェアメイトの協力で幼児教育を勉強できる学校を探した彩さんは学生ビザを取得してAuckland University of Technologyに通う事になった。
「学校は月曜日から金曜日まで9時から3時まであります。授業は大きく分けて子供の心理学、マオリ語、実習になります。この国の幼児教育の特徴としてはマオリ語だと思います。子供達が小さい頃から国の文化に触れるようにマオリ語を勉強する事が教育の中に織りこまれているのです。たとえば、数字の1から10をマオリ語でTahi、Rua、Toru、Wha、Rima、Ono、Whitu、Waru、Iwa、Tekanといった具合に子供に教えることが義務付けられています。心理学を学ぶ事で私が日本の託児所やベビーシッターを行ったときに経験したことが『どういった原因から起こったか』と理解を深める事ができました。しかし、すべてが英語の授業で今まで日本語でこういったことを学んだ事がない私は考えてしまうときがあります。それは授業の内容を英語でダイレクトに受け止めて理解しているので日本語での表現方法に困るのです。実習は経験を積むために自分で施設に連絡してボランティアをさせてもらうのです。そこでは施設の他の先生方と同じように子供達と接します。日本人にもなじみのメリーさんの羊やきらきら星をはじめレインボーソング、ハローソングといった歌を子供達と一緒に歌ったりおもちゃを作ったり、塗り絵をしたりします。ニュージーランドの幼児教育は子供に好きな事をさせて1日を過ごさせるような自由なところがあります。子供でも個性を大事にするといった教育です。私の通っている所は水をテーマに子供達が学習できるように取り組んでいます。水はどこからくるのか?水は何に使用されるか?など身近なところから水を学んでいくように教育しています。また、近年、子供達は日本、中国、韓国、ヨーロッパなどいろいろな国の子達が増えているので今まで以上に教育が大変だと先生方はおしゃっています。私自身も実習からそれを感じました。
私はもっと幼児教育について勉強したいと思っています。学べば学ぶほどもっと子供達の事が知りたくなっていきます。中途半端な講習や教室に参加するのでは意味がない、日本でも通用する資格を取るための勉強をしていきたいと思います。自由に気持ちを表現する子供達が大好きです。今後そんな子供達を相手に仕事をしたいと思います。」