E-CUBE 2005年11月

VOL.46 11月号


NZで活躍する日本人

時代を飾るキウィ




自由時間 : ワーキングホリデーやスチューデントで活躍中

<ラグビーレフリー:谷 欣也 さん | メイン | ファッションデザイン科学生:秦 由華 さん>

カフェのシェフ:森田 良子 さん

森田 良子 さん 料理をしながら、自分自身の夢が明確になりました。

いつも多くの人で賑わい、長年シティでキーウィに愛されてきたシエラカフェ。多くの日本人がスタッフとしてシエラカフェで働き、このカフェを陰ながら守り続けてきた。そのシエラカフェの味を守っているのが、シェフとして働く森田良子さんなのである・・・。

Ryoko Morita
森田 良子(もりた りょうこ)

1978年和歌山生まれ。小さな頃からお母さんが経営する喫茶店を手伝ったり、家事をしながら育つ。大学3回生(22歳)の時に始めて語学留学のためにNZへ。現在2度目のNZ生活を満喫する。数ヶ月間カフェで働き、NZ人のお客様の「料理に関する文句をはっきり言って、レストランに自分の欲しいものを分かって貰ってハッピー」というスタイルにもすっかり慣れてきた頃。現在の住まいも5年前にお世話になったキーウィのカップルから家の一室を借り、再び一緒に生活している。良子さんにとって、NZはとても馴染み易く居心地がよい場所だそうだ。

ハイストリートを上がって行き、ビクトリア通りを横切ると、ローヌ通りに変わる。そのローヌ通りの入り口辺りにいつも多くの人で賑わうカフェがある。シティの裏道にあり、決して華やかなカフェというわけではないが、長年シティでキーウィに愛されてきたカフェのひとつと言えるだろう。
このシエラカフェ、実は日本人と関係の深い店でもある。これまでに多くの日本人がスタッフとしてシエラカフェで働き、このカフェを陰ながら守り続けてきた。そして、今、そのシエラカフェの味を守っているのが、シェフとして働く森田良子さんなのである・・・。

仕事探し

 良子さんは、5年前の大学3回生の時にNZから日本に帰る飛行機の中で「NZにまた戻ってくる。」と心に決めた。戻って来たいという一心で良子さんは、今年の3月、ワーキングホリデービザでNZに戻ってきた。NZで生活するためのお金も必要だったこともあり、NZに着いて直ぐに仕事を探し始めた。英語の上達のために接客の仕事がしたいと思っていた良子さんは、ハイストリートにあるカフェ街のウエイトレスの仕事を探していた。採用の返事を貰ったカフェは幾つかあっても、パートタイムの仕事ばかりでフルタイムの仕事がなかなか見付からずにいたのだった。そんな時、シエラカフェの面接を受けることになったのである。

採用テスト

 「大学を卒業して、関西空港の免税店で働いたり、英会話学校の講師として働いていたので、シェフとして働いたこともなく、また料理学校でも勉強をしたこともないのですが、実家が喫茶店を経営しているので、母が料理をする姿を見ながら育ち、小さな頃から喫茶店の仕事を手伝っていたので、そこでの料理の経験がオーナーに気に入られたのではないかと思います。」シエラカフェでは、ウエイトレスも募集していたが、イタリア人シェフが母国に帰国したため、シェフとして働くことをオーナーに勧められた。シエラカフェは、シティの人気カフェということもあり、その忙しい環境で即戦力として働くことのできるシェフが必要なため、採用試験として候補者に2日間キッチンで働いてもらい、そのシェフの動きを見てからオーナーが採用の合否を決めるのである。調理師学校を卒業した多くの未経験者のシェフ希望者が、これまでこの2日間のテストを受けたが採用に至る人はほとんどいなかったという。「テストは、忙しい時間にキッチンに入り、注文書を見てどれだけ動けるかというものでした。とても忙しい時は注文書が10個くらい並ぶのですが、沢山の注文書が一度に並ぶと経験の無い人は、気が遠くなり何をしたらいいのかが分からなくなるそうです。」と良子さんは語る。
 良子さんも2日間のテストを受けた。そしてその翌日、オーナーから電話があった。良子さんに出された結果は「合格」だった。

英語

 良子さんは、和歌山県で育ち、大阪の短大の英米語学科に通った。英語に興味を持っていた良子さんは、短大の2回生の時に、奨学金制度を利用して1ヶ月間、語学留学のためにシドニーに滞在した。「その時の自分の英語力に愕然としました。これほどまでにできないものかと思って。」と良子さん。これが、良子さんにとって初めての海外で、初めての留学だった。良子さんは、語学力を伸ばすために、いつかもう一度留学したいと思ったのであった。
その後、良子さんは短大から大学へ編入し、経済を専攻した。そして、大学3回生の時に1年間休学し、念願だった語学留学のためにNZへ来たのであった。NZ留学中は、日本人の友人をできるだけ作らないようにし、英語環境にして過ごしたことで、帰国する時の英語力は良子さん自身が実感できるほど伸びたという。充実したNZ生活を送った良子さんは、「日本に帰る飛行機の中で、帰りたくなくて泣きながら帰ったのですが、その時、絶対にまたNZに戻って来ようと心に決めました。その時は学生ビザだったので、次はワーキングホリデーで戻って来るって。」
 日本に帰国した後も、国際情報センターなどに日本語と英語のエクスチェンジ募集の張り紙をし、多くの外国人の友人を作り、英語力が落ちないように努力したという。そのため、今回のNZ生活では、良子さんは、英語はそれほど不自由を感じていないようだが、英語力をアップすることをいつも目標としているため、シェフという仕事には初めはとても抵抗があったという。
 しかし、現在の良子さんは、「キッチンの中にいると、お客さまと接することができないと思っていたのですが、意外とお客様が『美味しかったよ』と声をかけて下さったりするので、お客様と徐々に喋るようになり、自然と仲良くなって一緒に遊びに行ったりする出会いがあることを知りました。」とポジティブに受け止めている。

シェフ 初めの1ヶ月間

 「接客はシェフをしながらでもできるから、一度シェフとして働いてみなさい。」とオーナーにアドバイスをされて、良子さんはウエイトレスとして働きたい気持ちを抑えて、シェフとして働き始めた。
 「オーナーから働く前に、初めの1ヶ月間は指先から体の全身が痛くなると言われたのですが、その時は大袈裟なことをオーナーが言っていると思っていました。でも働き始めると本当に全身が痛くなって、初めの1ヶ月間は家に帰ったら、疲れて寝ていました。」良子さんは、初めの1ヶ月の間に何度も仕事を辞めようと思ったという。「スクランブルエッグひとつにしても作り方が全く私の作り方とは違い、オーナーから何度も注意を受けました。また、私がお客様に提供してもよいレベルの料理を作っているかを確認するために、オーナーがずっと横についていました。そして、オーナーから事細かくマッシュルームの切り方などの注意を受けたり、オーナーに監視されていたのもプレッシャーでした。忙しいカフェなので、慌てさせられるので、毎日手を切ったり、火傷も凄かったです。その上、料理は殆どがイタリア料理なので、メニューやソースを覚えるのも大変で、持っていた『世界の料理辞典』を見ながら勉強していました。」

遣り甲斐

 働き始めて1ヶ月が過ぎようとしている頃から徐々に良子さんは仕事に余裕が出てき始めたという。次第に、良子さんはシエラカフェの仕事に慣れ、「今日のスクランブルエッグは上手くできたね。」とか「マッシュルームが凄く綺麗に切れているね。」と、徐々に小さな事から誉められるようになり、それと共にやる気が増していったのである。
 現在、良子さんはシエラカフェの全ての料理を作り、翌日の仕込みを行い、オーナーが作るお菓子類の下ごしらえを手伝い、シエラカフェのシェフとして殆どのことを任されている。「特にマフィンは全面的に私が任されているので、毎日2種類の人気マフィンに使うフルーツの種類やフレーバーなど、お客様に飽きがこないように様々な材料を念頭に置き、毎日のマフィンのことを考えています。」また、新しいメニューの味付けなどもオーナーと共に思案しながら更なる美味しさを追及しているので、仕事は毎日変化があってとても楽しく、遣り甲斐があるという。「オーナーは凄く理解のある人で、常に私のアイディアを取り入れてくれて、何でもチャレンジさせてくれるので、本当に良い勉強をさせてもらっています。また、オーナーから『良子から参考になることが沢山あるね。ありがとう。』と言ってもらえた時には本当に嬉しくて、更にやる気が増しました。」

気持ちの変化

 「はじめは、いやいやシェフとして働いていたのですが、料理をしながら、私はやっぱり自分自身のカフェバーを経営したいと思いはじめました。」シエラカフェでシェフとして働いたことで、良子さんは自身の目標を明確にすることができたのであった。

夢はカフェバーを経営すること

 「毎日学ぶことがいっぱい。」良子さんは、「みんなが気軽に立ち寄れて、美味しく食べれて美味しく飲めるカフェバーを日本でつくりたい。」とカフェバーを経営することを視野に入れていつも行動している。
「シエラカフェのメニューにエッグベネディクトという、ベーグルを半分に切ってトーストして、ポーチドエッグをその上にのせてホーランダイスソースをかける料理があり、そのソースはたっぷりのバターと卵黄と塩コショウにレモンを加えたソースで日本では食べたことのない味なのですが、このようなこれまで知らなかった料理やソースがシエラカフェには沢山あるので、私が経営するカフェバーのメニューの参考になっています。本来はシエラカフェのソースのレシピは、スタッフには教えてくれないのですが、将来私がカフェバーを経営したいことをオーナーは知っているので、私が日本に帰国する前には、全部のレシピを持って帰りなさいと言ってくれています。」良子さんの夢に、オーナーもとても協力的で、仕事が終わってからも、オーナーとカフェの経営に関する話をしたり、良子さんにとって様々な意味でここでの経験はとても勉強になっているという。
「シエラカフェの家賃は驚くほどの金額で、弁護士代や会計士やその他の経費も含めて店を維持するだけでも莫大な費用がかかっていることを知りました。シエラカフェで働いて、このお店の経営のコツは、全てを無駄にしないことだと見ていて思いました。そしてそうしながら、オーナーはいつもスタッフに潤いを与えてくれます。トマトのヘタや皮さえも捨てないで、私たちのまかない料理に使われます。ほうれん草の茎はパスタに入れるととても美味しいので、美味しいまかない料理になります。アイスコーヒーを作り過ぎた時は、スタッフに与えてくれたり、疲れた時はどのドリンクを飲んでもいいし、休んでね、とオーナーはいつも言ってくれます。そして毎朝、私たちは一杯のコーヒーを飲んでから仕事をスタートしています。」
良子さんの夢の協力者はオーナーだけではない。「キーウィの男の子がシエラカフェのスタッフとして働いているのですが、彼は、昼間はこのお店で働き、夜間はスカイシティでバーテンダーとして働いています。彼もカクテルのことやバーの情報を教えてくれます。週末は、日本で英会話学校の講師をしていた時に知り合ったキーウィの友人と色々なバーに行って、バーを見学しています。そこで、バーのマスターと友達になったりして、よい勉強になっています。」

今後

 「お酒は好きなのですが、カクテルに関してはあまり詳しくないので、NZにいる間にお酒の学校に通おうと思っています。」日本に帰ったら直ぐにでもカフェバーを始めたいと言う良子さんは、NZにいる時間をフルに活用し情報収集を行いながら、NZから日本の市場の調査も始めているという。
NZの生活の中から、日本に帰国した後にカフェバーの経営をしたいという気持ちが明確になった良子さん。シエラカフェの経営から「全てを無駄にしないこと」を学んだという良子さんの『自由時間』であるNZ生活も一時も無駄がないように、良子さんは夢に向かって走り続けている。

カフェのシェフ:森田 良子 さんと連絡を取りたい、勉強したい、体験したい、資格を取りたい、この分野で仕事をしたいと言う方はイーキューブ留学セクションまで、お問い合わせ下さい。

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