Vol.110 時代を飾るキーパーソン -ニュージーランドの女子ラグビー- |
2010年の女子ラグビーワールドカップでニュージーランドのブラックファーンズが世界を制覇したことは私たちの記憶に新しい。そこで最も注目を集めたプレーヤーの一人がAnna Richardsである。ニュージーランド史上最多の44キャップを持つ大ベテランは一度はメンバーからもれたものの、チームメイトの膝の怪我のために再招集され、これまでの4大会すべてに出場、そして優勝を成し遂げた。出場当時45歳であった彼女は、今後はコーチとして選手を育てたいという。
ラグビーのきっかけ 多くの他の女子のプレーヤーと同じく、私はもともとラグビーをしていたわけではありません。南島、サウスカンタベリーのティマルの近くの町で生まれ、学生時代にネットボールでカンタベリー代表になっていたのですが、そこから落ちてしまったのです。その時のコーチの旦那さんがラグビーに誘ってくれたのがきっかけでした。それがちょうど1987年頃で、その後ネットボールとタッチラグビーを両方やっていましたが、90年にクライストチャーチで行われたラグビーフェスティバルという、ワールドカップの前身のような大会でニュージーランド女子ラグビーの代表チームであるブラックファーンズに選ばれ、そこから本格的にラグビーに取り組んだのです。当時の女子ラグビーはプレー人口も少なく、みんなセカンドスポーツとしてやっていました。もちろん資金もほとんどなく、トレーニングはいつも男子チームの後で、夜の8時からスタートといったようにあまりいい環境とは言えませんでした。ラグビーのジャージも男子の後に使ったりしていて、男子の練習は土曜日、私たち女子は日曜日、それで洗っていないジャージを着ての練習だったりもしました。その後、2009年にはプレーを一時中断しましたが、ずっとラグビーを続けてきました。その間をみると、女子ラグビーを取り巻く環境は確実によい方に変わっています。手当はラグビーをはじめた頃は一日5ドルでしたが、今では150ドルに増えましたし、周囲のサポートのことでも、メディアのことでも変わっています。例えば前回のイングランドのワールドカップなどは、予選からすべての試合がテレビ中継されていました。これは今までにはなかったことです。 続けるモチベーション 私が長い間プレーしているので、いつ引退するのかとよく聞かれます。もうそういう質問には飽き飽きしています。ただ、ボールを持って走るのが好きですし、特に故障もないですし、自分が「もうやりたくない」と思えるまで続けたいです。もうひとつの理由は、楽しんでいたからです。ラグビーを通して友達も多くできましたし、得るものがたくさんありました。また、ブラックファーンズにいることは素敵なチャレンジでした。ワールドカップなど、国際レベルでの試合に出場させてもらえましたし、こうした幸運を続けたいと思っていました。楽しくなければ絶対に今まで続いていなかったと思います。それと、私には続けてきた大きな理由がもう一つあります。それは太りたくなかったからです。食べることが大好きですし、パーティーにもよく出席しますので、とにかくいつも運動していないと大変なことになってしまいます。それもラグビーを続けていた理由の一つだと思います。ラグビーとの関わりはプレーヤーとしてだけではなく、99年からはコーチも始めており、今は七人制ラグビーの女子のコーチをしています。このところ、高校生の女子をリクルートしたいと真剣に考えているのです。ニュージーランドには女子の高校生の大会もあるのですが、そこに出場するプレーヤーでさえも、卒業後はほんとに数人しか続けないのが今の女子ラグビーの現状です。こうした有望選手を連れて、ラロトンガに遠征に行ったりもします。いろいろな人に会って、プレー以外の部分でもラグビーの魅力をしっかり知ってもらおうということです。 女子ラグビー 女子ラグビーは男子に比べるとまだまだずっとマイナーです。なんといっても、女子ラグビーにはスポンサーが欲しいですし、みんなにもっと目を向けてほしいです。国際試合にチームを送り込むには資金が必要になります。ニュージーランドは地理的にいろいろな国から遠く、旅費もその分かかりますので、とにかくそうした方面にも力を入れたいと思っています。そのためには世界の女子ラグビー全体が盛り上がることも大切だと思います。もちろん日本の選手たちにも是非、頑張ってもらいたいです。彼女たちの活躍は、香港のセブンスもみましたし、昨年中国の広州で行われたアジア大会の七人制でも見ましたが、技術が一段と向上しているように感じます。後はもっとプレー経験をすることだと思います。ラグビーでは体格のことが言われたりもしますが、ニュージーランドのチームのバックラインなんて世界一小さいのではないでしょうか。それに、ついこの前も男子のラグビーリーグのウォリアーズの選手たちに会いましたが、彼らもそんなに大きくないです。ラグビーは大きさではなくプレーを組み立てる頭の問題なんです。大きい必要はないんです。今はプレーヤーとしてだけでなく、コーチとしての私もいます。そんな私自身のモチベーションは様々です。例えば女子選手をもっと海外に送りたいとか、スポンサーをもっと取りたいとか、もちろんここでも自分自身も楽しいということは大切だと思っていますが、選手たちに最大限に楽しんでもらえるバックアップをすることが今後の私の大きな役割だと思っています。 この記事を読んで、ラグビーに興味のある人、ニュージーランドへ留学してみたい方、ラグビー留学をお考えの方は下記のお問い合わせよりイーキューブのキャリアアップ留学センター「イースクエア」までご連絡ください。 |