Vol.110 Career up in NZ -ニュージーランドで料理長に- |
昨年末オークランドにオープンした「フレンチ・ジャパニーズ」のレストラン、MORITA。フレンチのシェフから老舗和食店の料理長へと異例の転身をした森田勝さんが、異国の地で再びフレンチの世界に臨むきっかけとなったのは・・・?
![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() フレンチのシェフが和食の料理長に オークランドの老舗和食レストラン、『有明』の料理長だった森田さんに大きな転機が訪れたのは、2010年3月。30年続いた歴史に残る名レストランの閉店はニュージーランド・ヘラルド紙でも報じられたほどの大ニュースだった。当時働いていたグループ会社からの異動で『有明』に入った森田さんだが、「いろんな人達の想いをなんとか引き継ぎたくて、『有明』を再生させようと思っていたのですが、お客様が求めていたのは30年続いた老舗の味ですから、自分だけでできることではありませんでした。それならば、無理に和食を追うのではなく、自分なりの形で再生させるという選択もあるのではないかと思い、『有明』への想いを別の形で引き継ぐ意味で、昨年12月にこの『French Japanese Restaurant MORITA』をオープンしました。」 有言実行でつかんだ世界チャンピオン そもそもフレンチのシェフが老舗の和食店に行く、というのは異例の人事だった。「やるしかないなと思いました。それまでも目の前のことを避けて通らないようにしてきたし、有言実行で夢や目標をすべてクリアしてきたので、そこが評価されたのかもしれません」その代表的なものが氷彫刻。ホテルで働いていた20歳の時初めて見て、あまりの美しさにすぐ挑戦した。まったくの未経験だったが、「できないとは思わなかったですね。なぜか最初からできると思いました。道具を借りて見よう見まねでいきなり大会に出場しました。」6年ほどは何の賞にも入らなかったが、18年かけてついに世界チャンピオンに。他にもIFSA(国際機内食サービス協会)のシェフコンペティションで優勝するなど、国際的にも輝かしい実績を持つ。そんな森田さんの目から見ても、日本人の世界的な技術レベルは相当高いところにあるそうだ。「日本人はいい意味でポリシーに柔軟性があると思います。だから吸収する力がすごくあって、いろんなものを取り入れるおおらかさがある。日本人にはこうした柔軟性があるからこそ、様々な分野で活躍できるのではないでしょうか。」本場で腕を磨いたその料理は、フランス人からも絶賛されるほど。MORITAでは「異国から来た日本人が作るフレンチ」を楽しんでもらいたいという。 自分のスタイルで最善のサービスを タパスや居酒屋風の店が増えてきたニュージーランドにあって、MORITAのこだわりは8皿のコース料理。実際に客の9割はコースを注文する。「コース料理はシェフの技術を見せる場であると思っています。ニュージーランドの食材、特に魚などは季節感がなく定番のものばかり、とも言われますが、市場で山積みになっている魚から選ぶのも、それをどう変えていくのかもシェフの仕事です。」野菜や魚は特に地のものを使いたいという森田さんは、毎朝市場に通ってその日のメニューを考える。8皿のコースだけでもチョイスを含めると20種類近いメニューが必要となる。「コースには流れがありますから、どこにポイントを置くのかが重要です。そのためにお客様の情報はなるべくたくさん欲しい。もちろんそれには実際にお客様と接するサービススタッフとの連携が不可欠です。」こうして得た情報をヒントに、同じコースを頼んでもまったく違う料理に見えるほど、1人1人に合わせて盛り付けや器を変えていく。「そうしなければいけないということではなく、それが自分のスタイルなのです。」少数精鋭の店だけに繁忙時にはキッチンのスタッフがサービスも担当する。「もちろん本職のきめ細やかさにはかないませんが、レストランでシェフにサービスされると安心だし、大事にされている気がしませんか? だから胸を張ってサービスすればいい、と伝えています。お金を払って来ていただいたお客様から「ありがとう」という言葉をいただけるのは一番嬉しいことですが、そのためには料理だけでなく、サービスや店の雰囲気などトータルで満足していただくことが必要。自分のレストランなりの最善のサービスのやり方が見つかればいいと思っています。」 肩に力を入れすぎずに楽しみたい 「開店して間もないですし、スタッフの経験が未熟な部分もありますが、逆にそれがとてもうまく作用して、みんなが毎日確実にレベルアップしている素晴らしいチームになりました。『有明』に来てくださっていたお客様や同じレストラン業界の方々などから、いろんな意味で注目されているのを感じています。でも、あまり肩に力が入りすぎてもいけないので、スタッフにも「がんばろう」とは言わず、みんなで握手をして「楽しもう」と言っています。」その言葉通り、取材中に出社してきたスタッフも森田さんと握手を交わして厨房に入っていった。「自分が10年かけて覚えたことを、彼らには1年で覚えて欲しいですね。そのために知識も技術もすべて公開しています。自分が作ったものを完璧に頭に入れて、早く同じレベルまで来て次にステップアップして欲しいです。」『有明』の閉店と共に会社を卒業したという森田さん。「若い人たちにはいつかこの店を卒業していってもらいたいです。そして自分自身にとっては、MORITAが成功した時が本当の卒業なのかもしれません。」 この記事を読んでシェフや調理師、ホスピタリティに興味があるという方、留学をお考えの方は、下記のお問い合わせよりイーキューブのキャリアアップ留学センター「イースクエア」までご連絡ください。 ![]() ![]() |