5年前に一大決心をして、NZへ移住してきた近藤眞弘さん。技術者として今の会社Telemetry Research Ltd に入り研究開発に従事している。自分が開発した新しいものが短期間で製品化されて売れるのが嬉しいという。少数精鋭の医療機器メーカーとして、今や世界中から注目のNZ企業を支える彼に話を伺った。
【Profile】
近藤眞弘 こんどう まさひろ Masahiro Kondo
1973年12月14日、京都生まれ。小5まで大阪で育つ。父の仕事の関係で小5から高校卒業まで札幌で暮らす。大阪大学理学部物理学科、修士課程卒業。NECで人工衛星を作る仕事に7年半ほど携わるが、2005年、東京で知り合ったNZ出身の夫人Deniseと一緒にオークランドへ移住。Telemetry Research Ltd. リサーチエンジニアとして活躍中。
ワイヘキ島在住。
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受付のスタッフと |
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CEOのSimon Malpasさんと 彼との出会いで今の仕事に決めた。 |
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会社には様々な機材が揃っている。 |
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仕事が趣味。恵まれた環境、と言う。 |
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実際にはんだ付けをしたりする事も。 |
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4歳の女の子と8ヶ月の男の子のお父さん。
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一緒に働く同僚(左からRob, Masahiro, Matt, Daniel)たちと、ハードウェアは若者にまかせ、近藤さんは、主にソフトウェアを手がける。 |
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これが現在手がけているテレメタ、より優れた物にするためにどんどん改良されている。 |
人工衛星を作った
私は、大阪大学を卒業後、東京のNECに就職しました。宇宙開発事業部で人工衛星に搭載する装置の開発をしていました。例えば、月に行った人工衛星「かぐや」では、NHKのハイビジョンのカメラが撮ったおびただしい数の月の映像を、筑波の宇宙基地に送るための装置を作りました。これは3年半ほどをかけた大きなプロジェクトでした。また、「きずな」という超高速インターネットの人工衛星や、地球の写真を撮るための宇宙ステーション「大地」にも携わりました。
宇宙開発事業部にいた7年半は、いつも新しいことを学び、開発していくことの連続で、とても面白かったです。私自身は仕事内容も、収入も、良くて満足していたのですが、妻がロトルア出身のNZ人だったため、2005年に一大決心をして退社。NZに移住して来ました。
仕事を探した半年間
妻は私と出会ったとき、東京で英語の教師をしていました。彼女は日本に3年半いてそろそろNZに帰りたがっていたのです。実は私は、NZに来たら日本食レストランでも、日本人向けのおみやげ物屋さんでもいいから何か職を見つけよう、と軽い気持ちでオークランドに来ました。日本で息をつく間もなく忙しく働いていましたので、しばらくのんびりするのもいいかな、とも思いました。オークランドにしたのは、やはりNZで一番大きい街だからです。東京から来ていきなり地方の田舎には住む気になれませんでした。
それでも、結婚式をする場所としてワイへキ島を訪ねて、そこがとても気に入りました。じゅうぶんのんびりした所なのに、オークランド市内まで通勤が可能。それで日本から到着して半年後にはワイへキへ引っ越しました。
NZでの職探しは、主にインターネットを使いました。日本を発った時はまるでエンジニアの仕事を期待していませんでしたが、こっちでエンジニアの職業斡旋をしている人に「あなたはエンジニアとして技術と経験があるのだから、絶対にエンジニアの仕事を見つけたほうがいい。」とアドバイスされました。NZにはあまり私の分野のエンジニアを必要とする会社がありませんが、その限られた数社に就職活動をし、幸いいくつかジョブオファーをもらうことができました。
将来性に賭ける
他社への就職がほぼ決まりそうになった頃、たまたま行ったオークランド大学の求人の面接で現在のボスと出会いました。彼は、大学で教えるかたわら小さな医療機器のメーカーをやっていました。そして、私の経歴を見て、大学ではなく自分の会社で研究開発技術者として働かないかと持ちかけてくれました。
その時点では、給料など待遇面で他社の方がだんぜん良かったのですが、会社でやっていることに深い興味を覚えたのと、会社のCEOに「あなたが今この会社に入れば、数年後には会社の中枢になるだろう」と言われて気持ちが固まりました。将来に賭けてみたのです。2006年の3月のことでした。
世界の最先端を行く自負。
もともと私は電気回路が専門で、ハードウエアの製造が自分の分野でした。実際に部品を組み合わせたり、はんだ付けしたりして、モノを創り出します。しかしそのうちに一緒に仕事をしていたパートナーの分野のソフトウエアにも意見を出すようになり、いつの間にか両方をやるようになりました。
現在のわが社の製品は、テレメタと呼ばれる、ラットの体内に埋め込んで心電図や血圧を測る装置と、その装置を充電するための装置などですが、どんどん改良してよりよい製品作りを目指しています。ICや半導体など新しくて良さそうな部品は比較的自由に、すぐに取り入れることができ、それを使って試作してみることができます。小さい会社ならではの融通性だと思います。
日本で人工衛星を作っていた頃はこんな感じではありませんでした。人工衛星って、一度打ち上げてしまったら、5年間でもメンテナンスなしで機能しなくてはならないでしょう? そのために主となるコンピューターなどは、故障しないことを最優先に選びます。つまり、機材の技術としては古い、壊れにくいシステムを採用することになるのです。
ですから私にとって、今の、どんどん新しい技術を取り入れて最先端を走っていける境遇はとても楽しく、やりがいがあります。いつも新しい情報を得て、新しい部品を見つけて取り寄せ、それを使って機器のプロトタイプを実際に創る。上手くいきそうなら製品化に向けて動き出す。そんな仕事の流れはとても刺激的です。自分は世界の最先端を走っているんだという自負があります。
新しいことを知るのは楽しい。
Telemetry Research Ltdの主なクライアントは世界の製薬会社などです。私が入社した時、この会社は売り上げ額がNZで37位にランクされていました。5年後の昨年、売り上げが400%アップで16位になりました。私が入ったとき5人だった社員も15人に増員し、注目されるNZ企業のひとつに成長しました。私の入社当初の賭けが実際のこととなりました。これからもますます伸びていくに違いありません。
私は勉強をするのが好きです。通勤のフェリーの中で、毎月日本から取り寄せている「トランジスタ技術」という雑誌や、いろいろな専門書を読みます。往復で1時間半ほどありますから。新しいことを知るのは楽しいです。また、ちょっと仕事の合間に、全くの趣味で自分が考えた機器を組み立てたりします。
実は、私がそんな風に趣味で作り上げたものが製品化されたこともあるんですよ。
この記事を読んでResearch Engineer 技術開発エンジニアに興味があるという方は、下記のお問い合わせよりイーキューブのキャリアアップ・センター「イースクエア」までご連絡ください。

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