Vol.10 自由時間 ニュージーランドでフラワーアレンジメント |
育子さんがニュージーランドに来たきっかけは英語の楽しさを教えてくれたゴスペルだった。
「短大を卒業してから幼稚園で働いていました。毎日子供達を相手に朝から晩まで忙しく過ごしていたのです。あるとき、雑誌でゴスペルコンサートの広告を見ました。映画『天使にラブソングを』を見たこともあったのですぐに興味を持ち、連絡してみました。すると、あなたも一緒にどうですか?といわれ、私自身も出演、参加する事になってしまいました。その日から2週間の特訓です。短い期間でしたが英語の歌詞を音のリズムで身体にたたきこみました。そしてコンサートは無事終了。全身で唄を表現している瞬間はこれまで味わったことがない興奮を与えてくれました」 そのまま、ゴスペルを続けた育子さん。もっとうまく表現するためには、英語の上達は不可欠だと考え、英会話教室に通い始めた。ちょうどその頃、職場の幼稚園でも英語教育を取り入れ始めた時期であった。 「幼稚園で働き始めて5年経った頃です。一週間の休暇が取れることになりました。毎日忙しかったので、海外でのんびりしようと思いました。そして、せっかくだから自分に対してテストをする事にしました。それは、もし、一週間の海外旅行がうまくいったら一年後に長期滞在をするというテストです。目的地は自然が多くて、のんびりとした環境で過ごせるということからニュージーランドに決めました」 2001年6月の一週間のニュージーランド旅行で試した、自分自身へのテストは見事合格。一年後の2002年6月育子さんはワーキングホリデーとして、ニュージーランドに戻ってきた。そして、ホームステイをしながら英語学校に通い始めた。 「自分が幼稚園で働いていたせいでしょうか、学校では、つい先生の教えかたが気になってしまいました。幼稚園では時には園児をほめながら、退屈しないよう工夫しながら教えていました。小さい子はつまらないとすぐになげ出してしまうものです。英語でも同じだと思いました。特にグラマーの授業では生徒は退屈になりがちです。いかに工夫して楽しませながら学ばせるかが先生の役割だと思いました。その点では私は非常に恵まれていて楽しく勉強ができました。ホームステイの環境も幼稚園での経験が役に立ちました。6歳と4歳のお子さんがいる家庭でしたが私が子供好きだったため、よく面倒を見たりしていたのでお母さんに感謝されていました。私にとっては子供と過ごす時間も英語を勉強する良い機会でしたし、日本とこちらの家庭のしつけについての違いなどを知ることもできました」 英語学校終了が近づいていたが、その後の予定が決まっていなかった育子さん。そんなある日、フラワーアレンジメントコースの募集広告が彼女の目にとまった。
「私の実家は最近まで花屋さんをやっていて、みようみまねで手伝いをしていました。ニュージーランドはガーデニングやフラワーフェスティバルが盛んである事は知っていましたし、めずらしい種類の花があり、最近は日本でも注目されていると聞いていたので機会があったら花に関する事を勉強しようと思っていました。 草木の生育に適した環境のニュージーランドからは毎年大量の花が日本に輸出されており、シンビジウム、サンダーソニア、カラーなどはなかでも多くの割合を占めている。日本では1本1500~2000円で売られているカサブランカでも、この国ではリーズナブルな値段で手に入れることができるため、練習にも使うことができる。 「実際に花を手にとって作るということは貴重な経験です。見るだけでは色や形はわかっても、茎がどんな硬さなのか、曲げやすいのか、曲げにくいのか。また出来上がってからの感覚は想像しただけでは大きく違いますからね。そういった花を使って作品を作れるのもニュージーランドならではだと思います」
基本を習ったあとはフラワーショップにインターンシップ研修として実習に行くことになる。 実習をしたお店の仲間たちは最後の日に「また、いつでも戻っておいで」と言って育子さんを送り出した。
「今後はタウランガでファームステイ、ネイピアでフルーツピッキングをしてからクライストチャーチに行く予定です。ガーデンシティのクライストチャーチでもお花に関わることができればいいなと思っています」 |