2月に「スーパー12」が開幕し、今年もラグビーシーズンが到来したニュージーランド。稲葉潤さんは、そのラグビー王国の地域のクラブチームでラグビーをプレーしていた。
Jun Inaba
稲葉 潤
ラグビー選手 / Rugby player
1976年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。幼い頃からラグビーを続け、大学を卒業してからも東京ガスでプレーをする。ケガでプレーできなくなったことからニュージーランドラグビーに興味を持ち、03年7月ニュージーランドに来る。現在、ポンソンビー・ラグビー・フットボール・クラブに所属し、プレミアムでのレギュラーを狙う。ポジションはウィング、フルバック。英語学校が終わると毎日トレーニングのためジムに通っている。
幼い頃からラグビー
私は幼い頃からラグビーをしていました。というのも父親にラグビーの試合を見に連れて行かれたのがキッカケでした。今でも覚えていますが慶応大学とトヨタ自動車が日本一を争った試合でした。試合が始まってから、時には選手同士がぶつかり、一つのボールを追いかける姿を目の当たりにして、それまでは感じたことがなかったピリピリとした緊張感に興奮したのです。
それ以来、ラグビーに興味を持つことになりました。そして、友達がラグビースクールに入るときに一緒にラグビーを始めることにしました。
ラグビーでは、ボールを持ったチームは、走ったり、パスしたり、キックしたりしながら、前に進まなくてはいけないのですが、サッカーで手を使ってはいけないというルールがあるのと同様に、ボールを前に投げてはいけない、というルールがあります。ですから、攻撃側は簡単には前に進めません。また、ボールを取られたチームはタックルをして攻撃を阻止し、ボールを取り返そうとします。前後半合わせて80分の試合中、こうした攻撃と防御を繰り返しながらトライを目指していくのです。
ルールなど細かいことはよくわかりませんでしたが、プレーを重ねていくうちにラグビーのゲームの発展性に富んで想像力を使うことが面白いと思うようになっていきました。
その後、中学、高校とずっとラグビーを続けました。友達の中には他の部に転向する人もいましたがラグビーをプレーするのが楽しくて仕方がなかったのです。
大学に入って海外のプレーに触れる機会があった
大学1年の時から毎年、2週間ほどキャンプでオーストラリアに行きました。そのとき、地元のチームと練習試合を行ったのですが、彼らの試合中の集中力はすごいと感じました。試合が始まった途端、スイッチが切り替わった様にボールに集中するのです。日本人以上に試合が終わるまでの80分間、それを保ち続ける精神力の強さに感心しました。また、コーチが指導するスケジュールの立て方、モチベーションの上げ方なども日本とは違うと感じました。
大学時代に出会った海外のプレーヤーやコーチとの交流を通して海外でのプレーに興味を持ち始めました。
その後、大学を卒業し、会社に入ってもラグビーは続けました。昼間は他の同僚と同様に仕事をこなし、その後ラグビーの練習を行っていました。シーズン中は週末を使って試合をするなど仕事とラグビーを両立させながら生活していたのです。
ですが入社した1年目に私は肩をケガしてしまいました。そのため、リハビリに専念する日々が続き、結局2シーズンプレーが出来ませんでした。ラグビーを始めてから、それまで大きなケガをしたことがありませんでしたから大変ショックでした。プレーをしたくても出来ない、フラストレーションがたまっていきました。そのことからパフォーマンスを上げたいと思うようになっていきました。
03年7月ニュージーランドに来る
ケガをしたことで、よりパフォーマンスを上げたいという気持ちが高まっていきました。
そして、そのためには海外で経験してみるのがいいと思ったのです。大学時代オーストラリアの選手とプレーをしたことはありましたが、以前から選手個人のパフォーマンスが高く、ゲームの組み立て方などの創造力を持っていると感じていたニュージーランドラグビーに興味があったことと、当時ニュージーランドドルのレートが良かったため、英語学校に通ったり、生活をするのにも最適な国だと考えたのです。
就職してから4年、上司に相談して休職という形を取らせてもらい、03年7月にビジタービザでオークランドに来ました。
そして、知人の紹介から高校の日本語アシスタントをしながら、英語の勉強とラグビーをプレーするクラブを探しました。
そして、現在プレーしているポンソンビー・ラグビー・フットボール・クラブに参加することになりました。
以前から日本でもそのクラブの名前を聞いたことはありました。というのもブライアン・ウイリアムス、カルロス・スペンサーなどオールブラックスの選手を何人も輩出しているクラブだったからです。過去の成績では優勝も多く、オークランドの伝統あるチームとして多くの人がここでプレーをするために来ているクラブなのです。
プレーするクラブが見つかった後も昨年はラグビーのワールドカップが開催されていたことで、それが終了する11月までニュージーランドに滞在していました。
一旦日本に帰国をして今年1月に戻ってきた
基本的にこの国は誰でも練習に行けばチームに参加できるシステムになっています。各地域、各チームによって多少異なると思いますが、ラグビーをプレーしたい人はプレシーズントレーニングに集合してフィットネス中心の練習をします。2月の下旬からは、プレシーズンマッチと呼ばれるシーズン開幕前の練習試合みたいなものが行われるので、そのとき、しっかりと結果を出せば上のチームに入ることができるのです。
各クラブではいくつかグレードがあります。一番上のチームは「プレミアム」と呼ばれています。このグレードは多くのオールブラックスの選手や、各国の代表選手が集まるレベルの高いグレードです。
その次は「シニア1」、このグレードはプレミアムの予備軍で、ここで良いプレーをした選手はプレミアムチームへ昇格することができます。逆に、プレミアムに選ばれても結果が良くなければシニア1に降格するのです。私は、現在その両方に所属してプレーをしています。
オークランドではファーストディビジョンと呼ばれる1部リーグとセカンドディビジョンと呼ばれる2部リーグに分かれています。そして、各ディビジョン10 チームのリーグ式によって、行われたファーストステージ(前半戦)が終了した時点でファーストディビジョンの下位2チームとセカンドディビジョンの上位2 チームが無条件で入れ替わります。そして、セカンドステージもリーグ方式で行われ、セミファイナルからトーナメント式で優勝を決めるのです。
3月下旬からシーズンが開幕し、7月下旬から8月上旬位までゲームは続いていく
普段は英語学校に通っていますが、毎週火曜日と木曜日の夕方から行われるチームの練習に合流しています。特に練習方法が日本とは違うということはないのですが、練習は1時間から2時間程度の限られた時間しかありません。ですから、レギュラーの座を本気で狙っている選手はそれ以外の時間もトレーニングしています。レギュラーを取るんだという意識が普段から感じられます。実際、ニュージーランドの高校代表の選手ですらレギュラーになるのは難しいのです。いくら過去に実績を残していてもプレーでそれを見せられなければ意味がないのです。
そうした実力主義がこの国のラグビーシステムを支えています。クラブチームで活躍したプレーヤーはオークランドやカンタベリーなどの地区(州)代表であるNPC代表に選ばれ、その中でも優れたプレーヤーがその上のスーパー12のメンバーに選ばれます。そしてさらには、ニュージーランド代表であるオールブラックスに選ばれるというピラミッドが存在しているのです。実際プレーしてみて、その層の厚さがこの国のラグビーの強さの秘密なのだと思いました。
シーズンが開幕してから毎週土曜日に試合が行われます。まだ、シーズンは始まったばかりですがプレミアムでのレギュラーの座を目指し、がんばりたいと思います。
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