Vol.11 Career up in NZ ニュージーランドでヨットのメンテナンスの仕事 |
ウェストヘブンマリーナに係留されているヨット「Georgia」のメンテナンスを仕事とする寺川智子。15歳のときに両親の友人のヨットに乗せてもらったことがキッカケとなり、その魅力にとりつかれてしまった。
不思議でした。雑音は一切聞こえない、波を切って進んで行く音だけが耳に入ってくる。見えるのは海と空の青だけ。頭の上には太陽があって暑いはずなのに、Tシャツだけでは、腕にあたる風が冷たい。今では当たり前だと思っていることですが、初めてヨットに乗せてもらったときには一つ一つに感動しました。それ以来、ヨットに乗りたくて乗りたくて仕方ありませんでした。月に一回だけ行くことを許されていた私はいつもその日のことを考えていました。 高校を卒業してヨット関連のショップに就職。同時に地元で女性だけのヨットチームに入った。 セーリングを続けながらヨットの仕事ができるなんて幸せなことだと思っていたのはちょっとの間だけでした。結局、趣味と仕事を一緒にしてはダメだと思いました。休みの日にヨットに乗りに行くと、必ずと言っていいほどお客さんと顔を合わせるのです。すると自然と話が仕事のことになってしまう。相手がお客さんなので気を遣ってしまう。私は純粋にヨットを楽しみたかったのです。そんなときに、私のチームがアメリカのニューポートで行われるレースに参加することになりました。長期でアメリカに行くことになるため、これはいい機会だと思い一旦、仕事を辞めることにしました。 帰国後、智子はコンピュータープログラムの仕事をしながらセーリングを続けた。そしてニュージーランドにレースで来る機会を得た。
96年の3月にオークランドで開かれたAir New Zealand International Regattaに誘ってもらったのです。日本人は4人、キウイが4人の混成チームでした。その時に一緒に乗ったキウイは現在アメリカズカップを保有しているRoyal NZ Yacht Squadronのトレーニングプログラムコース出身の人達でした。すばやい動作や風の判断など、彼ら一人一人の技術の高さに私はただ驚くだけでした。 00年の9月に智子は再びニュージーランドへ来た。今度はワーキングホリデーのビザでの入国であった。
私は4年に一度行われる世界一周レースに出たいと思っていました。それで、参加を予定しているアメリカのチームにコンタクトを取っていました。先方からは一度顔合わせにおいでと誘われていたのですが、英語で自分を上手に売り込む自信がなかったので、レースのある時期にアメリカでトライアウトをしてもらうことにしたのです。そこでの出来は上々でした。ただ、私に足りないモノも見えてきたのです。それはセーリング以外のこと、例えばマスト関連の知識やセールを修理する技術など、特に長いレースに出るのであれば修繕することを覚える必要があると思いました。それと英語コミュニケーションも必要に迫られました。 日本で渡航準備をしている間、智子は仕事ができる可能性のあるニュージーランドの会社を調べた。
入国した日、既にこちらに来ていた友人の家にやっかいになることにしました。 2時間後、智子はニュージーランド屈指のセールメーカーであるNORTH SAILSの前に立っていた。
受付で恐る恐る、クリスさんに会いたいと言いました。しかし、クリスって誰?あなたは誰?とまるで不法侵入者が来たかのようにジロジロ見られました。どうしようか困っていると、奥から「あっ、そういえば」という顔でクリスさんが出てきました。そして工場を見学させてもらい、マネージャーを紹介されました。マネージャーはヨット話を少しした後「いつから来られるの」と聞いてきました。 仕事になれた頃、智子に新しい話が舞い込んできた。
NORTH SAILSに電話をかけてくれた人が私のところにやって来たのです。そして「Georgiaを管理してくれる人を探しているんだけどやらない?」と言われたのです。Georgiaとは2000年の10月に進水したばかりの53フィートの真新しいヨットです。しかし私はまだNORTH SAILSで仕事を始めたばかりです。まだこの会社を辞めたくはありませんでした。タイミングが悪すぎる気がしました。ただ、私がこの国に来た動機がメンテナンスの仕事がしたいということでした。しかもフルタイムでできるメンテナンスの仕事は日本では考えられません。それが女性であればなおのことです。 車で5分。仕事場がマリーナのヨットの上に変わり、渋滞もなく、ラジオの音楽一曲分の時間で通勤できるようになったと智子は言う。
Georgiaがいつレースに出ても万全の状態に保つのが私の仕事です。ウィンチの動きが悪ければ分解して調べます。ロープは切れそうな部分がないかいつも確認する必要がありますし、滑車の油差しも欠かせません。もちろんセールのチェックも怠れません。通常はNORTH SAILSと同じ7時半から4時までの勤務です。しかし、レース前になれば時間は関係ありません。修理が夜中までかかることもあります。しかし、私が手を抜けばそれが原因でレースで負けてしまうかもしれません。それは何より耐え難いことです。それでつらいと思ったことは一度もありません。 留学したい、体験したい、資格を取りたい、この分野で仕事をしたいと言う方はイーキューブ留学セクション、イースクエアまでお問い合わせ下さい。 |