Vol.2 時代を飾るキウイ プロヴィダンス・ワインメーカー |
プロヴィダンス・ヴィンヤード オーナー・ワインメーカー
ニュージーランドのワインと言えば白、赤ワインと言えばオーストラリアと言うのはもう時代遅れ!
「プロヴィダンス」というワインをご存じだろうか?れっきとしたニュージーランドの赤ワインだが、恐らくほとんどの読者が見たことも聞いたこともないと言うに違いない。一部のワインファンの間では「ニュージーランドのシンデレラワイン」とまで言われる。それは突然にして出現したすごいワインという事だ。値段は高いが、手が出ないと言うなかれ。すばらしいワインとはこんなワインのことを言うのだ!
|
|
1944年北島パパロア生まれ。クロアチア出身の両親からワインづくりを学ぶも、オークランド大学で法律を専攻。本職は弁護士。趣味で始めたワインづくりだが、クオリティーの高さから世界中からオーダーが絶えない。将来は弁護士の仕事を縮小して、ワインづくりに没頭したいと考えている。現在オークランドで法律事務所を構える。妻ジェ-ンとの間に二女。
|
イナリーの新名所「マタカナ」
「マタカナ」という場所を知らない人も多いに違いない。オークランドから北へ車で約45分、ワークワースの先を東方向に入ったエリアのこと。ワイヘキ島がこのところすばらしい赤ワインを生み出している事は周知の事実だが、ここ「マタカナ」も負けてはいない。
クロアチアから移民して来た両親が北島のカウリ博物館の近くのパパロアに小さなぶどう畑を持っており、私はそこで育ちながら、ワイン作りを覚えました。両親はぶどう栽培とワイン作りに古くからかかわっていた家系の出でした。しかし、私は大学で法律を勉強し弁護士になったため、ワイン作りに本気で取り組むつもりはありませんでした。とは言うものの、小さい頃から家の周りにあったぶどう畑の緑は頭の中に残っているんですね。緑に囲まれて生活したい気持ちが嵩じて、結局自分でぶどうを植える事になりました。
マタカナはワイヘキ島に近い気候で、近くにあるワークワースよりもいい天気の日が多く、雨も少ないのが特徴です。粘土質の土地、北向きのスロープ、夏は暑く、冬は霜も降る気候がぶどう作りにとても適しています。今ではこのマタカナに約10ほどのワイナリーがあるほどです。今後も増えてくるに違いありません。
シンデレラワイン?
1990年に現在のワイナリーのある場所にぶどうを植え、最初の収穫(初ヴィンテージ)は1993年。この時にすでに自分が目指しているレベルのぶどうに達していると感じたと言う。わずか3年で突然にして出現したからこそ、シンデレラワインと言われる。
ワインで有名なフランスのボルドー地区などでは通常ぶどうの収穫には最低でも7~8年必要と言われますが、それがたった3年で可能となりました。それはこの土地、気候の良さに加え、手をかけてぶどうを栽培しているからだと思います。その一つに「プロヴィダンス」のぶどうの木は他のワイナリーと違って丈が低いことがあげられます。これはボルドー地区などでも同じで、丈の高い木に比べて丈が低い木は地面からより多くの熱を受ける事ができるようにするためなのです。
栽培しているぶどうの品種はメルロー、カベルネ・フラン、マルベック、シラーの4種類です。栽培方法は限り無くオーガニックに近いと思います。しかし、ぶどうの木に亜硫酸だけは散布する事にしてします。油虫にやられてぶどうが全滅してしまった友人を知っていますので。したがって、完全なオーガニックではありませんが、ワイン自体に亜硫酸を入れたりする事はありませんので、私は「ピュアなワイン」と言っています。
「プロヴィダンス」ブランドで作られているワインは3種類あります。ぶどうの品種やそのブレンド比率を変える事によって種類を分けています。メルロー主体のブレンドProvidence(プロヴィダンス)、カベルネ・フラン主体のブレンドPrivate Reserve(プライベート・リザーブ)、そして、オーストラリアの赤ワインの品種で有名なシラーズだけを使ったSyrah(シラー)です。
ニュージーランドで買えないワイン
しかしながら、この3種類のワインはどれもあまりニュージーランドで見る事はできない。ほとんどがニュージーランドのボトルショップの棚に乗る前に海外のバイヤーに売れてしまうためだ。
ニュージーランド産だからといってニュージーランドで売らなければいけないという事はないと思います。「プロヴィダンス」を分かってくれる人ならばどこの国に住んでいる誰でもいいと思います。もちろん数は少ないですが、ニュージーランドでも数軒のボトルショップで売っていますし、ワインリストに載せているレストランもあります。
「プロヴィダンス」はまず、ドイツで火がつきました。ドイツの知人を通して紹介してもらったところ、大量にオーダーが入り、値段もどんどん上がっていきました。その後、スイス、シンガポール、香港、そして日本にも輸出されるようになりました。実際、ニュージーランドよりも日本で「プロヴィダンス」を見かける比率の方が高いと思います。
海外で人気があると各国のバイヤーや輸入業者に招待されて、いろいろな国に行けることが楽しいのです。そういった所ではワインの話題は尽きません。必ず世界の超有名ワインがふるまわれます。ワインメーカーにとって世界の一流ワインをいつも味わっている事がいいワインを忘れないでいるためにたいへん大切な事なのです。
ワイン作りのポリシー
毎年わずか8000本。もちろん、ぶどうの出来によって生産本数は毎年変わる。2000年、2001年はぶどうの生産量が減った年。しかし、そのクオリティーは高い。
2000年、2001年のワインはまだ樽の中にありますが、約4500本ほどしか作れないと思います。一般的にぶどうの生産量が少ない時にはぶどう自体の品質が良くなります。たくさんのぶどうが平均的にできるよりも少ないぶどうにその良さを凝縮する事になるからです。今まででは93年、98年そして2000年が出来のいい年だと思います。
私は個人的な意見として、ブレンドの赤ワインの主要品種として使われているカベルネ・ソビニオン種はニュージーランドの気候に合わないと思っています。それは、成熟しきらないうちに摘み取らなければいけないからです。そんなカベルネ・ソビニオン種をブレンドするとワインの中にどうしても青臭い香りが出てしまいます。
ですから私はカベルネ・ソビニオンを栽培していません。当初はメルローを主体にしてブレンドをしていました。その後、カベルネ・フランを主体にしたプライベート・リザーブも作る事にしました。といいますのは、私が好きなワインがフランスのボルドー地区でカベルネ・フランを主要品種として作られる「シャトー・シュヴァル・ブラン」だからです。男性は強さを感じさせる「プライベート・リザーブ」を好みます。カベルネ・フランが強いフレーバーを放つからでしょう。逆に女性はメルロー主体の「プロヴィダンス」を好みます。ソフトでエレガントな飲みくちだからだと思います。
ベストのモノがない時代だから
よく「どんなスタイルのワインを作りたいか?」と質問をされる。そんな時には「ベストのワイン」と答えると言う。妥協をせず、最高のワインを作るためのこだわりを見せる。
私が子供の頃は家の近くのデイリーには5種類のバターが売られていました。近くの各農家の自家製が店頭にあったんです。塩辛いもの、クリーミーなものなどそれはバラエティに富んでいました。各農家が自分のバターは最高だと自信を持って売っていたんです。しかし、今はどうですか?メーカーが効率的に生産するために、画一的になってしまっています。キウイフルーツにしてもそうです。収穫が早く、熟成させないで出荷してしまうので、ベストのものではないんです。
ニュージーランド人 はよくSo-Soで終わらせてしまいがちです。こだわりがないんです。これはニュージーランド人の精神面の弱さだと思います。
効率的にものを作ると、どこかを妥協しなければいけません。私はそうしたくありません。ベストのものを作るためにこだわりたいんです。毎年新樽を使うのもそのためです。ワインを作る度にフランスから新樽を輸入するんです。実は樽は使い回しが可能です。多くのワインメーカーは樽を2~3回は使い回しします。でも、ベストの方法は新樽でワインを作る事なのです。
そして世界中のすばらしいワインを飲み続ける事。そうしないといいワインとはこんなものだという基準を忘れてしまいます。このワイナリーの壁に並んでいる空ボトルの数々は今まで私が飲んだワインの歴史です。これも私のワインへのこだわりです。
ワイン留学したい、体験したい、資格を取りたい、この分野で仕事をしたいと言う方はイーキューブ留学セクション、イースクエアまでお問い合わせ下さい。
関連記事 「食べる、飲む、もてなす、暮らす、旅する」ための最新ガイド
関連記事 好きなワインを記憶する。これがワインを知る第一歩です。
関連記事 ワイヘキ島の一流ワイナリー、Stonyridgeのボルドースタイルワイン
|