Vol.88 時代を飾るキーパーソン ヴァイオリニスト西崎崇子さん |
香港在住で世界で活躍している日本人ヴァイオリニストの西崎崇子さんは年に数回ニュージーランドを訪問し、オークランド大学、地元の学校、そしてプライベートでヴァイオリンを教えている。名演奏家は必ずしも名教師ならずと言われるが、西崎さんが小さい頃から学んでいた音楽は教育と密接に結びついていたことが、いまの西崎さんをヴァイオリンを通した教育に駆り立てている。
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自宅のある香港ではチャリティーコンサートに力を入れている。現在は特に自閉症やダウン症の子供たちの施設のための活動が中心となっている。
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レコーディングの回数は世界でも群を抜いている西崎女史は、どんなにハードなスケジュールでも自分の気持ちがしっかりしていれば乗り切れると言う。
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家にはCDの上位売り上げを示すゴールドディスクやプラチナディスクが多数飾られている。
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子供のレッスンはいつも、汗をかいて教えることになるという。
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中国人作曲家による「The Butterfly Lovers」は中国人よりも中国的に演奏したという評価を得ている。
人との出会い 「私は小さいころからヴァイオリニストだった父が聞いていたレコードを一緒になって耳にしており、なかでも「20世紀最大のヴァイオリニスト」と称されるオーストリア出身のフリッツ・クライスラーという作曲家でありヴァイオリニストが好きで、彼のレコードで育ったといって過言ではないほど、何度も聴いていました。クライスラーの代表作でもある「愛の喜び」「愛の悲しみ」などは特に、いつ聴いてもその印象は変わることがありませんでした。 物心ついたときにはヴァイオリンを手にし、音楽を通じて人を育てる教育法スズキメソードの第一期生になったのは3歳半のころでした。実はそのころから人前で演奏する機会を多くいただいていて、日本がVIPとして招いた海外のお客様は皆さん、私たちの住む名古屋へわざわざ演奏を聴きにいらっしゃっていました。それほど名古屋はクラシック音楽で知られていたのです。その後もヴァイオリンを続け、大学はアメリカへ留学しました。人生の中ではいくつか大切な出会いというのがあるのですが、そこで不思議なご縁があったのです。 そんな私にとっては憧れの存在であったクライスラーと親交が深かったアメリカ人家族にニューヨーク留学中に出会ったのです。また、ちょうど同じ頃、クライスラーの奨学金を受けることができ、私の中の音楽がどんどん広がっていくときでもありました」 楽器との出会い 楽器として世界最高のヴァイオリンの双璧とされているストラディバリウスとガルネリウス。作られてから200年経った今も、最高の音を出す名器といわれている。随時、高価なものとして取り上げられるストラディバリウスは現在、約600梃ほど残っているとされている。それに対し、わずか60梃ほどしかないとされているのがガルネリウスである。 「楽器との出会いも同じように不思議なご縁がありました。ヴァイオリニストになり、ある時期から私もストラディバリウスを使っていたのですが、あるときにガルネリウスと出会って、すっかりその音色のとりこになってしまいました。ただ、それだけではありませんでした。今から約8年前のことです。ウィーンを訪れた折に、いつも立ち寄る楽器屋さんがあり、そのときも同じように遊びに行ったのです。すると店主が『君が来るのを待っていたよ、必ず気に入ってもらえるものがあるから』と言って、一梃のヴァイオリンを差し出してくれたのです。手に取った私は、少し弾いただけで、なぜか涙がボロボロ出てきたのです。それもやはりガルネリウスだったのですが、モデル名がなんと『Xクライスラー』で、名前の通り、本人が使っていたヴァイオリンだったのです。 それを知った私はお値段のことも考えずに、そのまま、自分が持ってきたガルネリウスを置き、クライスラーを持ち帰ってしまいました。今は自宅のある香港に大切に保管してあります」 奏者から指導者へ 演奏者として名を馳せた後、現在はヴァイオリンを弾くことのほかに、後進を育てることに力を注いでいる。しかし、名演奏者イコール名教師というわけではないと西崎さんは言う。 「ヴァイオリニストであり、音楽の教師もしていた私の父はスズキメソードを発案した鈴木鎮一先生と共に音楽教室を立ち上げました。それが、私が一期生になったスズキメソードですが、鈴木先生や父からは常に教育についての話を聞いていました。実は教育論はヴァイオリンと同じくらいの比重だったのです。つまり、ヴァイオリンを習うと同時に、教え方も知らず知らずのうちに身につけていたのです。 ヴァイオリン奏者と言われている多くの人は生徒さんを持ち、楽器の指導をしています。しかし、残念なことに、ほとんどの場合、その生徒さんたちはその才能を開花させないままで終わっているようです。演奏旅行などで各国を廻るとよく、『ウチの子のヴァイオリンを是非、聴いてみてください』とおっしゃる親御さんがいます。時間が取れる場合、私も聞かせていただくことがあるのですが、そのほとんどが基礎すらできていない状態のまま演奏しているのです。特に弓を持つ右手のテクニックができていないことが多いのです。これは子供の問題と言うよりも、教える側の問題ではないかと思のです」 音楽の道だけでなく 「ヴァイオリンという楽器を弾きこなすのは全て自分です。音程を取るのも、美しい音を出すのも、メンテナンスするのも全て演奏家の手に委ねられています。音を出す際にはほんの少しでも指の角度が違えば、まったく違う音程になります。演奏するには準備と集中力が欠かせません。こうした心の部分とテクニックの体の部分と併せ持って初めて、演奏できるのではないかと考えています。ただ、私は自分の生徒には将来、音楽の道だけでなく、どんな道に進もうと自分で切り開いていける力をつけてもらいたいと思っています。それには年齢が若いに越したことはありません、女の子でしたら3歳くらい、男の子で5歳くらいのスタートが素直にいろいろなものを吸収できると思っています。 また、いずれは先生方を指導できればとも思っています。今後は演奏活動だけでなく、こうした教育も進めていきたいと思っております」 この記事を読んで音楽に興味のある方、留学をお考えの方はイーキューブの情報センター「イースクエア」までお問い合わせ下さい。 |