Vol.97 時代を飾るキーパーソン -元オールブラックス Craig Innes- |
プロのラグビー選手として十数年、世界中のピッチを駆け回ったクレイグ・イネス。プレーから引退した現在は、自分の現役時代の経験を生かし、後輩選手のエージェントとしてニュージーランド・ラグビーに貢献している。いい選手をいい条件の海外チームに送り込むのがその仕事。日本はニュージーランド・ラグビー選手にとって居心地のいい所、と言う彼。その理由は?
全てがチームワーク、のラグビーに魅せられて 私の父は、結構いいラグビー選手でした。ワイカトやタラナキの地方代表チームに選ばれるほどでしたが、特にラグビーを職業にしようという訳ではありませんでした。父の影響というか、それより、その頃って、ニュージーランドの男の子はみんなラグビー、だったじゃないですか。だからそうするのが自然という感じで、私も5歳の頃からラグビーを始めました。幸い、私は他の子に比べて体が大きかったのと、ちょっと足が速かったので、子供の頃からいつもチームのスタープレーヤーでした。ラグビーって、完全なるチームスポーツですよね。すべてがチームワーク。ひとりでは何もできない。どんなに個人が素晴らしくても、サポートが無ければ得点できないのです。私は、ラグビーのそんなところに魅かれました。人と人との関係をとても大切にする、本当にソーシャルな世界。また、試合後には味方だけでなく相手チームの選手とも分けへだてなく親しく交流します。そんな人間同士の絆がラグビーの素晴らしさなんです。 自らの経験を踏まえ、後輩にアドバイス 私はプロの選手として、いろいろな場所で12年間プレーしました。私が引退した2000年ごろは、まだラグビーがプロスポーツとなって日が浅く、多くの選手がマネージメントを必要としていました。選手がそのキャリアを終えたときに、本人の将来のための何か、たとえば財産などを残せるよう、現役のうちからしっかりと人生設計をする。誰かがその手助けをする。私は、これから活躍しようとしている後輩に、自らの経験を踏まえたアドバイスできると思いました。そして現在に至っているわけです。World in Motionには大きく分けて、3つの部門があります。ひとつはニュージーランド国内の選手のマネージャーとして、国内のチームとよりよい契約を取り付けるように働く部門。それから、高校の対抗試合などに頻繁に出向いて、将来のタレントを発掘、育てようという部門。そして、私が担当する、インターナショナル部門。私の仕事は、これから海外に飛躍しようという選手を、その選手の条件に合ったチームに紹介してより有利な契約を取り付けることです。イギリス、フランス、南アフリカなどラグビーが盛んな国へはもちろん、日本の実業団チームへも選手を数多く派遣しています。 日本はとてもいいマーケット 私は日本が大好きです。日本でプレーをした選手も、そのほとんどが日本びいきになって帰ってきます。日本の実業団チームは外国人選手に家族ぐるみで来日することを奨励します。その受け入れ態勢はとてもしっかりしています。つまり、選手と家族の生活全般がきちんとお膳立てされていて、その上、スケジュールまでもが細かくうまく組まれているので、選手たちは良いライフスタイルをあまり苦労せずに楽しむことができるのです。契約金も高いですしね。日本の実業団チームの契約を終えて、ニュージーランドに帰ってきた選手がまた日本に帰りたいと希望するようなことは良くあります。また、遠いとはいっても、日本は飛行機でたった12時間の距離。ヨーロッパへ行く半分。そんなワンストップの比較的手軽な場所にあるのも日本のいい所ですね。だから、私は躊躇無くいい選手を日本のチームに紹介できるのです。実はつい先ごろ、ちょうど実業団チームが来期の選手確保に動いている時期なので、私もマーケティングのために10日間、日本に行ってきました。東京に始まり、釜石、名古屋、宮崎、福岡、大阪と精力的にいろいろなチームを見て回り、かなりの手ごたえを得ました。今や、日本のマーケットがいちばん大きくなっている、といっても過言ではないのです。 2019年に注目される日本のラグビー 最近の世界恐慌の影響で、日本の実業団チームの名門、ヤマハが来期は外国人の選手と契約をしないと発表しました。大きな打撃です。正直言って心配ですね。私のクライアントにもその影響をまともに受けた選手がいて、現在彼の移籍先を交渉中です。早くこんな状況から脱出できると良いですが、こればかりはどうしようもありません。以前は、引退間近で最後にひと稼ぎ、という感じで日本に行く選手がほとんどでした。日本側も名の知られた選手を好む傾向がありました。でも最近では、日本のチームも、若くて将来性のある選手と長期間契約したがるようになっています。日本でプレーしているニュージーランドの選手の平均年齢は数年前には30ぐらいだったのが、今では26歳ぐらいに若返っています。最近、アジアのラグビーのレベルを向上させるために、アジアの国のパスポートを所有する選手は日本のチームで優遇されるようになりました。日本での2019年のラグビーワールドカップを期に、日本のラグビーは世界から注目されるに違いありません。 この記事を読んで、ラグビーに興味のある方、ラグビー留学をお考えの方はイーキューブのキャリアアップ留学センター「イースクエア」までご連絡ください。 |