Vol.98 Career up in NZ 1 ニュージーランドで介護士として永住権取得 |
自分では何も出来ない重度の身体障害者の生活を支える介護の仕事。その献身的な重労働をニュージーランドで始めた日本女性がいる。英語の壁を乗り越えて資格を取り、実務経験も重ねた今は、その職業で永住権も獲得した。大城裕美子さんがその人。クリスマスに近いある日、彼女の職場を訪ねた。
アットホームな環境の介護施設 閑静な新興住宅地のごく普通の一戸建て。ここが、裕美子さんが介護士として働く身体障害者のレジデンシャル・ケア・ハウスだ。クリスマスの飾り付けがされた玄関を入ると、中央の廊下をはさんで左右にいくつか寝室や浴室が並ぶ。廊下は家の中心である広いラウンジ、ダイニングキッチンへと続く。全く普通の住宅といった風情。身障者介護の施設というと誰もが想像する、のっぺりとした病院風の建物とはほど遠い。 「実を言うと、私も初めてここに来た時は驚きました。本当に普通の住宅地の中にある普通の家。でも、そんな根本的なところからアットホームなのが、クライアントには必要な環境なんですよね」 患者、という言葉は使わない。ここは医療施設ではなく身体障害者が普通に一緒に日々を暮らす家なのだ。 「ここには6名の重度の身体障害者が一緒に生活しています。全員が車椅子を必要とし、全員が言葉を使えません。その6名の生活を、私を含めた6名のフルタイムスタッフと、数名のパートタイムで24時間のシフト体制を組んでケアします」 起床、シャワー、身支度、食事、などなど暮らしの全てを手助け。各部屋の掃除や、洗濯も仕事のうち。それから話し相手になるのはもちろん、公園や海岸に連れてお出かけしたり、パーティを開いたり、と娯楽も提供。 「みんな言葉で表現出来なくても、楽しいときは笑ったり、嬉しそうな表情をします。そんな様子に出会うとき、私はこの仕事をしていて良かったな、と思います」 難しい医療専門用語を克服して、 介護士の資格を取得 日本で外科病院の看護士として7年ほど働いた後、98年にワーホリでニュージーランドへ。英語学校へ行くかたわら、ボランティアとして老人ホームや身障者施設で働いた。その時に同様にワーホリしていた夫と知り合った。一旦は帰国したが、01年に今度は2人でニュージーランドに住む目的で来た。 「最初はニュージーランドの看護士の資格を取ろうと思ったんです。でも、そのための学校へ入るにはIELTS7の英語力が必要でした。そんな時、新聞の広告で介護士の資格を取るコースを見つけたのです。日本で看護士をしていた頃から、介護には興味がありましたから迷わず決めました。マヌカウにあるInstitute of Applied Learning Centreという小規模な学校でした。6ヶ月でレベル3の介護士の資格が取れるコースはIELTS5.5、私の英語力でも入学できました。そこはほとんどの学生が地元の人で、しかも年齢が比較的高く、一度社会に出たけれど、また何らかの資格を取ってキャリアを変更するために学校に入り直した、そんな人たちばかりでした。ですから、ただでさえ英語での講義についていくのが大変なのに、その上難しい医療専門用語が頻繁に出て来て苦労しました。本当に必死で勉強しなければなりませんでした」 努力の甲斐あり無事卒業。資格も取れ、担任の先生の紹介で介護士の人材派遣会社に所属。ワークビザも下りて、派遣介護士として老人ホームや身障者施設などで働き始めた。 「現在のレジデンシャル・ケア・ハウスにも最初は派遣で来ました。私は、いろいろな介護のうち特に身体障害をもった人たちのケアに興味がありましたから、ここの仕事はとてもやりがいがあります。スタッフはとてもいい人たちばかりで、チーム一体、みんな助け合って働いています。いつもハッピーな雰囲気ですから、ここで暮らす6人はきっとハッピーだと思います」 身障者に対する社会の認識を変えたい 「私たちがクライアントと公園などにいると、よく白い目でじっと私たちを見る人に出くわします。子供ならまだしも、大人からも、無遠慮な興味本位の冷たい視線を感じることがよくあります。そんなとき、私はとても残念で、腹ただしく思います。もちろん、フレンドリーに声をかけて励ましてくれる暖かい人もいますけれども」 「将来は、障害のある子供のケアをしたり、それからもっと福祉の勉強をして、身体障害者に対する一般社会の認識を向上させたいです」 裕美子さんは、今後ニュージーランドで介護士を目指す人が続いてくれる事を願っている。それが、身体障害者介護の認識を高める事になると信じている。
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